◇◆信州高山温泉郷で夏休み◆◇
このときカナが機嫌を損ねていた。
最近多いんだ、彼女。
反抗期というか、自分で自分をどうしたら良いか判らなくなって、あれでもないこれでもないと言い出す。
このときは水泳用ゴーグルだった。
私は旅行先のプールまではゴーグルを持参しなかった。
するとカナはゴーグルが無いとプールに入れないと言いだし、売店で200円で売っていたから買ってあげると言えばいらないと言う。
じゃあ、どうしたいわけ~?
ちび姫ちゃんとレナはさっさと流れるプールに飛び込みはしゃいでいる。
カナだけうつむいたまま大人と一緒にベンチにいる。
そこへがっちゃんが浮き輪を買ってきた。
高かったけど買ってきた。
何故かサマーランドの売店は、水泳用ゴーグルは200円で売っているくせに、浮き輪は1,300円だった。
「ほうら、これでどうだ?」
カナの顔が明るくなった。
何かきっかけがほしかったらしい、がっちゃんが買ってくれた浮き輪を手に、みんなとプールに入っていった。
こういうときは親が言っても駄目なんだよね。
ありがとう!! がっちゃん。
それからの子供たちはよく遊んだ。
もう本当によく遊んだ。
ずーっと流れるプールにいて、三人で浮き輪に捕まったりもぐったり追いかけっこをしたり。
時々がっちゃんが茶々入れに行ってくれて、三人がかりで水を掛けられていた。
こうしてみると、この三人は本当に仲良くなっていた。
親同士が仲良しだから一緒に旅行に行くことが多いけど、割と最近までレナは馴染めなかったのだ。
たぶんちび姫ちゃんが大人になったから、今は三人が三人一緒に仲良しになった。
ちび姫ちゃんにとっては、カナは友人でレナは共通の妹なのかもしれない。
サマーランドにはウォータースライダーがあったが、身長制限120センチ以上だったので、レナは無理だった。
レナが無理ならカナも滑らないと最初から言っていた。
ちび姫ちゃんだけは一人で一度滑りに行っていた。
公営プールらしく、サマーランドには1時間に一回、10分程度の休憩時間がある。
4時の休憩を待って、退園することにした。
その頃になって空模様が怪しくなってきた。
昼間は晴れていて、ちょうどプールに来た頃から少し雲が多くなってきたのだが、4時頃の空は今にも大粒の雨が落ちてきそうだった。
しかも遠雷が少しずつ近づいてくる。
でもまさか、私たちは、あんな恐ろしい大雨になるとは思ってもいなかった。