◇◆がんばれ新潟◆◇
四万温泉と雪国古民家の旅
さて、今回私たちは若井さんに頼んで「納豆作り体験」をさせてもらうことになっていた。
このとき若井さんは納豆作りセット一式を持ってきてくれていた。
私たちは一年前、予約を入れておきながらパパの体調不良で来られなかったお詫びをし、世間話などしながら若井さんの納豆作りの準備を見ていた。
「まず藁苞(わらづと)を作ります。早い話が藁と大豆を袋に入れておくだけでも納豆は作れますが、せっかくなので藁苞も手作りしましょう」
若井さんは板張りの床にばらばらと置かれた藁を指して、この藁も自家製の無農薬なんだと教えてくれた。もちろん納豆にする大豆も自家製無農薬だ。
作業に取り掛かる前に若井さんはそれら無農薬野菜の作り方から私たちに教えてくれた。
「まず大豆の種をまいて芽がでます。すると鳩が食べに来てしまいます。本葉が出ると、今度は山うさぎ。それから成長してくるといわゆる枝豆になって、これは人間も食べますが、タヌキにも大好物なんですね」
動物に食い荒らされないように、虫や病気に負けないように、でも農薬は使わず育てるというのは如何に大変なことか。
「このくらい束にして・・・」
カナとレナも若井さんの真似をして藁をひとつかみ手に取る。
「片方を藁を紐にして結んだあと、端を切り揃えます」
ねじって挟み込むようにする藁の結び方も難しいが、藁の束をハサミで切るのはもっと大変。子どもたちは互いに手伝いながら作業を進めていった。
「それから半分ぐらいのところで藁を二つに折って・・・見本を作りますからそれに大きさを合わせてくださいね」若井さんは片側を結んだ藁の束を二つに折って、真中をたわませて広げた。「ここに大豆を入れます」
工作やモノづくりの好きなカナはもくもくと藁苞を作っているが、レナは途中で根を上げてパパや私に手伝ってもらった。
親の分も合わせて一人二つぐらいの藁苞が完成して、今度はこれにゆでた大豆を詰めることになる。
大豆をゆでる作業はここに来る前に若井さんが済ませてきていた。
「この大豆の種類はサトイラズという名前で、砂糖がいらないくらい甘いってことですね。ほら、甘い匂いがするでしょう」
若井さんは大きな金属製のボウルに入れた大豆の匂いをかがせてくれる。
「納豆を作る納豆菌は珍しい菌ではなく、このへんの空気中にも存在します。ただ、藁が好きなので藁のなかには特にたくさんいます。しかし藁には他にもいろいろな雑菌がついていますので、納豆菌だけにするため、まずこの藁苞を煮ます。納豆菌は熱に強いので生き残ります。長時間は無理ですが、短い間なら200度の熱にも耐えます」
みらい2号館の台所で湯を沸かし、一番大きなアルマイト鍋に若井さんは藁苞を入れてぐらぐらと沸騰させた。
私は納豆菌はどこかに種菌として保存してあって、それを特別に藁に付けて増殖させるとかそんなことをしているのかと思っていた。熱に強く、藁ごと煮て、他の菌を滅菌させるという話も初めて知った。
へぇ~なのだ。
「そば打ちや豆腐作りが体験できるところは沢山ありますが、意外と納豆作りが体験できるところは少ないんですよ」と、ちょっと得意そうに若井さん。