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◇◆がんばれ新潟◆◇
雪国のお正月2007

11.アクエリアの露天風呂










 アクエリアは日帰り専門施設だと思っていたが宿泊もできるようだ。
 大人800円の入館料は、スキーシーズンに限り千円に値上げする。
 施設は思ったよりも古びていて、スリッパも一昔前の雰囲気だし、受付をすると渡されるバスタオルの入った手提げも色あせている。
 畳敷きの大広間休憩室の場所を確認して、男湯と女湯に別れた。

 脱衣所は意外と狭い作りでベビーベッドなども置いていない。
 鍵の掛かるロッカーと単に脱衣籠の並ぶ棚と両方ある。
 でもお風呂はまあまあ広く、さらに露天風呂は広かった。
 先に子どもたちの髪も全部洗ってしまうことにした。
 洗い場もそれほど数が無いに関わらず、空いているので困らない。一昨々日のナステビュウの方がよほど混雑していた。
 内湯は温泉の浴槽と、半円になった圧注浴の浴槽とあった。
 浮いているものはゴミではなく湯の花だという表示がある。
 でも冬の内風呂ときたら湯気もうもうで、おまけに外は暗いので浴室内も何となく薄暗く、もうお湯の色も浮遊物も何も判別がつかない。
 露天風呂への出口はあまり目立たなかったので、アクエリアに露天風呂があると知らない人は気づかないんじゃないかと思ったくらいだった。
 でも出てみると立派な岩風呂だった。
 二つに仕切られていて、半分が適温で、もう半分がぬるめで浅くなっている。
 浅い方にお母さんに抱っこされた赤ちゃんが入浴していて、目が合うときゃっきゃと笑った。

 カナとレナは浅い方に入り、その後しばらくして雪が積もっている方に行ってしまった。
 お風呂から手を伸ばして触れるところに雪があると、長湯になるんだよね。
 雪をまるめたり固めたりしていつまでも遊んでいる。
 どういうわけか今露天風呂にいるのは全部うちと同じくらいの子供をつれた家族連ればかりだった。
 子どもたちはみんな雪が大好き。
 おでこに雪をくっつけてみたり、岩の上に並べてみたり。

 私は流石に寒かったので熱い方の浴槽に入っていた。
 ばしゃばしゃと大きな音を立てて岩から落ちてくる湯口のお湯はかなりぬるい。
 お風呂につかっていると時々表面を熱い湯が流れてくるので、どこか浴槽内にお湯の注入口があるようなのだが、暗いのでよく判らない。
 お湯の臭いは雑巾みたい。
 どちらかというと臭い臭いなんだけど、まあそれも温泉の個性。
 肌触りはきしきしとして、少し乾いてくるとぺとぺととする。さらに完全に乾くと皮膚の上に何か一枚コーティングしたようなつっぱり感が感じられる。
 塩加減は良い塩梅で、昨日までいた松之山周辺の濃厚な食塩泉のように、ほんの僅かな入浴時間でどっと体力を吸い取られるようなことはない。

ピンぼけしてる写真だけど一応ゲレンデが見える



 アクエリアの岩風呂は外側に向けて大きな岩がいくつも並んでいるが、その向こうにはゲレンデが見える。
 既にとっぷりと暮れた空は低い雲が垂れ込めていて、お湯に肩を沈めながら見上げると赤っぽく見えた。
 「ねえ、どうしてあっちの空が赤いの?」とカナ。
 「あの下にスキー場があるからナイターの灯りが雲に反射しているんだよ」
 「本当?」
 「岩の間から見てみれば」
 子どもたちは岩に近づいて外をのぞいた。
 「本当だ、スキー場の灯りが見える」
 「綺麗だね」

 雪遊びをする子どもたちに付き合っていて、随分と長湯してしまった。
 もうパパはとっくにあがっているに違いない。
 急いで大広間に行ってみたが何故かパパの姿はなかった。
 「・・・もしかしてどこかで煙草を吸っているかも」
 アクエリアの休憩室は禁煙だ。どこかに喫煙スペースがあるのだろう。
 「私が探してくる」
 カナが言うと、レナもついていく。
 しばらくして二人揃って戻ってきて、こっちに来てと私の腕を引っ張った。
 パパはもう下駄箱で靴を出しているところだった。
 どうやら休憩室で待ちくたびれて、案の定どこかで一服していたらしい。
 私たちがあまりに長湯だったから呆れたものか。
 何も言わずにさっさと靴をはいて出てしまった。
 アクエリアの立地条件や設備が気に入らなかったとは思えない。これは・・・きっと空腹に耐えかねているに違いない。



5-12空腹に耐えかねてへ続く


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