9.ラストコースは果てしなく
さて、さっきも書いたが大沢ゲレンデのスタート地点からは2本のリフトがV字に伸びている。
パパはまだ乗っていないもう一本のリフトを選んだ。
スキーセンターに直結しているメインゲレンデに向かうリフトと違って、利用客もまばらだ。
というか、私たちの前にはほとんど人の姿がない。
何より不安なのは、隣のリフトはずっと大沢ゲレンデの横を通っていくので、リフトを降りたらどこを滑れば元の場所に着くかすぐに判るが、こちらは木立の上を通り、どんどんゲレンデと離れる方向に上っていくので、いったいどうやって戻ればいいのだろうと思うことだった。
ああ、私はさっさとスキーは切り上げて、大沢山の幽谷館のお風呂でのんびりしたかったよー。
ふいに前方でざざーっという音がした。
リフトの下に小川が通っていて、そこに向かってひとかたまりの雪が崩れたのだ。
何だか嫌な予感がする。
本当にこのリフト、どこまで上っていくのだろう。
いつの間にかまた雨が降り出した。
空も灰色で光は全然見えない。
ようやく終点に着いた。
とにかくここから上ってきただけの距離を滑り降りれば駐車場に着くのだ。
そう思ったが、なんと信じられないことに、滑り降りようとした方向では大きな赤い×印の看板が通せんぼうしていた。
コース・クローズド。
なにそれ。
すぐ隣には次のリフト乗り場。
ここからは滑って他の場所に移動することができないようだった。
仕方なくもう一本リフトに乗る。
本当に私たち、元の場所に帰れるの?
リフトからちらりと見えたコースはかなり急斜面に思えた。
どこからゲレンデに出るのか判らないけれど、元の場所に戻るには今のコースを滑るしかないのだろう。
軽い気持ちで一本リフトに乗ったはずが、今はどこまで連れて行かれるのかさっぱり判らなくなっている。
次のリフトの終点も降り口がなかった。
仕方なくもう一本リフトを乗り継ぐ。
きっとこの辺りは当間ゲレンデの一部なのだ。
大沢ゲレンデであのリフトに乗ったとき、特に注意事項など伝えられなかったから、ちゃんとあっちに戻るコースは用意されているはずだが、果たしてどんなロングコースになるんだろう。