5.連休明けの罠
トンネルを抜けるとスキー場だった。
ナビに乗っていた九十九折りの旧道は未舗装で、冬季はスキー場のゲレンデになっているらしい。
しかしスキー場はあるけれど、大沢山の温泉旅館はどこにあるのだろう。ゲレンデの駐車場に車を止めて途方に暮れてしまった。
大沢山温泉というと、日本秘湯を守る会の冊子で大沢館の写真を見たことがある。湯船からの景色はまさに絶景。しかしそこは立ち寄り入浴を受け付けていなかったはずだ。
もうひとつ、
高七(たかな)城というところもあったはず。こちらはかなり手広く立ち寄りを受け付けていたと思う。
ちなみに目指すは
幽谷荘。どんなところだろう。
平日でがらがらのゲレンデ駐車場にいても、場所が全くわからなかったので、出たところにあるラーメン屋で道を聞くことにした。
週末はスキー客で混雑するであろうラーメン屋も、今日は見るからに暇そうだ。
中に入ると主と女将と顔馴染みらしい客一人、世間話をしている。
「あのう・・・」
三人がいっせいにこちらを振り向く。
「幽谷荘への道を教えていただけませんか?」
三人とも顔を見合わせる。
なんとはなしに、嫌な予感がした。
「幽谷荘さんなら、いまそこに」
主に紹介されて、ただ一人の客が決まり悪そうにこちらを向いた。
と、いうことは・・・。
「今日はお休みだ」
やっぱり~。