1.松芋神社に初詣
四日目 元旦 2004年1月1日(土)
松代町蓬平の初詣は、夜中の0時にいっせいに始まる。
村人たちが続々と集まり、雪の中小さな神社に参拝するというのだ。
私たちが若井さんに聞いていることと言えば、とにかく0時になったら通りに出て、三叉路まで行けば村の人たちが列をなして神社に向かうからすぐに判る、神社は泊まっている一号館から見える場所にあるということだけだった。
寒いのが苦手でも、お祭りごと、珍しいこと、イベント好きな私は、ほくほくとコートを着て靴を履いたが、同じく寒いのが苦手でしかも雪道を歩きたくないyuko_nekoさんは最後まで行かないと言っていた。
しかし気がつくと、大人四人は雪の降り止んだ夜道を、新雪を踏み分けながら一列になって歩いていた。
新年開けたばかりの村は、静寂の中にぽつりぽつりと民家の灯りが見えるばかり。ひとけも無い。
坂道を降りて集落まで出たが、予想に反して誰の姿もなかった。
「その三叉路ってどっち? 本当にみんな歩いてるの? 出るのに手間取って0時を少し回っちゃったからもう誰もいないなんてこと無い?」
「・・・三叉路はこっちだろう」とパパ。
こんなにひとけが無いのに、本当に道に迷わず行かれるのかな。
歩きながらふと、神社は高いところにあるかもしれないと見上げると、何かちらりと見えた。
「ね、あそこに鳥居が見えた気がする」
しかしパパが振り向いたとき既にそれは別の民家の影になって見えなかった。
・・・パパ、私の言ったこと、信用してないでしょ。
道が緩くカーブしていたので判らなかったが、すぐ先が三叉路で、確かに三叉路に出ると数人の人影が曲がって行くところだった。
「ほら、俺の言ったとおりだろ」とパパ。
人影はぞろぞろと急な階段を上っていく。
見上げるとそれは、さっき私が見つけた鳥居に繋がっていた。
「ほら、私の言った通りじゃない」と私。