1.まだ市バスの罠を知らず
後から思えばこの日は旅行中、唯一の晴れだった。
もちろん雨が降ったのはほんのちょっとだったし、他の日だってほとんど薄日は差していたんだけど。
そしてこの日が晴れることは事前の天気予報でも判っていたんだけど、でも昼ごろに予定していた
北白川天然ラジウム温泉が明日定休日だったりとか、和菓子作り体験の予約を事前に入れてしまったとか、既に出発前に動かせない部分のプランは固まってしまっていたので、むしろ他の日よりも桜の名所率は低くなってしまってそこだけがずっと悔やまれている。
それにこの日は一応平安神宮と南禅寺も行くつもりだったのだが、これも最終的には時間の都合で行かれなかった。
真っ青な晴れ空の下、満開の桜が見られたらどんなにか綺麗だっただろう・・・。
いやいや、この日だって全然桜の名所を回らなかったわけでは無い。
ただ単に、もっと上手くやれたんじゃないかなって後悔があるからずっと心に引っかかっているんだろう。
まあそういうのも含めて旅なんだけどね。
ビルの間から伸びるながぁい飛行機雲が青空を分断していた。
私たちの泊まっているヴィラージュ京都のある四条大宮は、決して観光地らしい場所じゃない。
複数の車線のある大きな交差点は阪急京都線の大宮駅と京福電鉄嵐山線の四条大宮駅の出入り口が斜めに向かい合っている他は、中くらいの背丈の飾り気の無いビルが通りに沿って続き、周辺の店舗もチェーンの飲み屋やコンビニやドラッグストアばかりが目につく。
コンビニでパンやカップスープを物色していったん部屋に戻り、軽い朝食を取った後で8時半頃出発。
行先は甘春堂東店。
和菓子作り体験を申し込んだ菓子匠だ。
慶応元年創業の京菓子老舗。
場所は地図で見ると鴨川より東、五条と七条の間だから単純に考えて六条辺りになるんだろうか。近くに豊国神社があるらしい。
出発前の計画では、せっかく電車の駅の近くに宿を取ったのだから普通に電車で移動するとして、
8:29 大宮駅から阪急京都本線で河原町方面へ
8:33 河原町駅着 京阪本線の祇園四条駅まで徒歩で移動、乗り換え
8:42 祇園四条駅から京阪本線準急淀屋橋行きに乗り2駅移動
8:45 京阪七条駅着 たぶん10分ぐらい歩けば甘春堂東店・・・と考えていた。
しかし、昨日京都に着いてから、烏丸線と阪急京都本線を使って四条大宮まで移動し、その後は5回市バスに乗って観光地を回ったところ、思っていたよりも電車の乗り換えは面倒で、さらに思っていたよりもずっと市バスは便利で時間に正確だった。
ということは、意外と今回も電車よりも市バスを使った方が楽なんじゃないか? そんな風に考えた。
しかも市バスだと乗り換えも不要だ。
四条大宮から206番線に乗れば7番目の停留所が博物館・三十三間堂前で、ここは電車で移動した場合の京阪七条駅よりも目的地の甘春堂に近い。
その上、今日も市バスを使い倒すつもりで昨日のうちに市バスの一日乗車券を買ってある。何回乗っても追加料金なし。乗れば乗るほどお得なはず。
元々の計画がバスでなく電車利用だったのは、時間の読めないバスでは集合時間に間に合わない可能性があるかもしれないと思っていたからなのだが、こういうわけでバスで行くことにした。
ちなみにこの「市バスの時間が思ったより正確」というのは罠であり、昨日の経験から安易にこれを信じてしまったことが今日の午後の計画の崩れに繋がっていく。
この時はまだ知る由もないが。