みどり荘の入り口から見ると、女湯露天風呂はみどり池の対岸で、そんなに大きな池ではないが湖畔をほぼ半周しないと辿り着かない。
そのためかここのお風呂は深夜は入浴できない。露天風呂は朝も夜明けまでは入れない。
履いてきたブーツではなく、部屋の玄関にあった草履に履き替えると、坂になっているところが歩きにくい。
まずちょっとだけ大浴場をのぞき、それから露天風呂に向かった。
大浴場には誰もいなかったが、ちょうど私が出るときに入れ違いで二人組の女性が入ってきた。
落ち葉を踏みしめて池を半周し、辿り着いた女湯露天風呂は一人だけ先客がいた。
男湯は池の真横に露天風呂があるようだが、女湯は竹垣や植木で池は見えない。
洗練された雰囲気の漂う長方形の石の浴槽。
お湯は無色透明。すっきりと綺麗。
掛け湯槽もあるが熱く感じたので、湯船からお湯を汲んで掛けた。
湯船も少し熱めだが、入るのに難儀するほどではなく、入ってしまえばそれほど熱くは感じなかった。さらにそんなにのぼせないタイプのお湯。
浴槽の縁の岩の上には石の蛙が寝そべっている。結構かわいい。
カエルのお腹辺りに「虫さん葉っぱさん湯から出してあげてネ」と書かれた木の札が置いてあって、その横に虫取り網が一つ立てかけてある。
やわらかいゆでたまご臭。きしつきは弱いものがあるが、むしろするすると滑る感じが強い。
そして長い時間入っていると「するする」がだんだんパワーアップしてくる。
湯口に柄杓が置いてあったので、飲むとゆで卵のにおいが鼻からも入ってくるが味としては苦味が強い。薬っぽいほどではなく、春の山菜ぐらい。
しばらく入っているとだんだん手足がちりちりとしてきた。
二人で入っていると、先客の連れの女性が来て、それからさっき大浴場ですれ違った二人組も来て、たぶん今夜の女性宿泊客全員が夕方の露天風呂に集ったと思う。
でもみんな地元民じゃないから特に連れ意外に話しかける様子も無く、全員ひたすらお湯に浸かっていた。
ホントに随分長い時間、誰も上がることなく露天風呂で過ごしていた。
そうしている間にゆっくりと辺りは日が陰っていき、元々みどり荘に着いた時から晴れてはいなかったのだが、それでも明るかった空はだんだんと紫を帯びて、湖畔にも灯りが灯りはじめた。