露天風呂の表示の通りに館内を進んだら、裏口みたいなところから外に出て石段を下りるようになっていた。
本当にこのルートでいいのか?
石段はかなり急で、このホテルがあるのは砂浜のように波打ち際に近い場所ではなく、むしろ溶岩の台の上のような立地なのだと気付いた。石段を下りるごとに海がせり上がってくる。風が吹いて髪の毛が顔に掛かる。
石段の下には思ったより殺風景な露天風呂が一つあった。
コンクリートで固めた屋上みたいなスペースに、海ぎりぎりじゃなくて少し離した位置に四角い露天風呂。露天風呂のすぐ隣には男女別の入口の付いた脱衣所の小屋。
え、ええーっ、ここの露天風呂って混浴だったの? 知らなかった。
といっても、脱衣所は男女別だし、お湯は塩泉によくある濃い渋めの緑色で入ってしまえば見えない、何より今他に誰も余所のお客さんがいないんだから、まあ言うなれば貸切状態。
浴槽は多少岩など配置してあるが、基本的にはコンクリの四角いもので、そのものには風情はあんまり無いが、入ってみたらそんなことは気にならなかった。
とにかく目線の高さに水平線。
凄い凄いと声を上げたくなる絶景。これは素晴らしい。想像以上。
ちなみに場所が桜島の島内なので桜島そのものは背後で見えないが、水平線には端正な開聞岳も見えて素晴らしい景観。
お湯の色は先ほども書いたように典型的な塩泉系の濁り湯。
濁りの度合いはとても強くてお湯の中は全然見えない。
気持ち熱めの適温。湯口のお湯の流れる辺りは赤茶色に染まっている。
入った途端にこれはあったまりそうなお湯だなと思ったが、そのまんますごくあったまる。長く入りっぱなしはきつい。
そうそう、臭いはとても鉄っぽい。お風呂に近づいたとたんに強い金属の臭いがかげる。
二人で入っていたら男性の入浴客が一人やってきた。
流石にいくら濁り湯でも出入りの時は厳しいので、その人が脱衣所に入った段階で上がることにした。
もう景色もお湯も十分堪能したので。