子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ お湯は適温、塩分が濃いので長湯に注意
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★★☆ 混浴露天風呂は家族で入るのにいいかも
子連れ家族のための温泉ポイント
大隅半島から桜島に渡る。
いったん南国らしい椰子の並木が海岸沿いに続く国道220号線を戻り、大正時代に溶岩で繋がったくびれの桜島口で左折する。
道の右側、木立の奥ににぼこぼこ盛り上がり固まった溶岩が林立する奇怪な光景。その名の通り、これらは大正溶岩と呼ばれている。
一方道の左側は風光明媚だ・・・と言っても今日は天気が良くないが。
溶岩の群れが終わると右側には峰の稜線が雲か噴煙かわからない中に向かって伸びていく迫力のある景色が見えてくる。
今から向かうのは古里温泉。
桜島の南側の海岸沿いにあり、作家 林芙美子が一時期住んでいたことがあるというこの地区の温泉は、元は三軒の宿が並んでいたようだが、一軒は廃業し、今は二軒のみ営業を続けている。
手前がさくらじまホテル、奥が桜島シーサイドホテル。
桜島シーサイドホテルの方に入ることにした。
熊本に一年暮らした夫は、当時九州のあちこちを自転車で回って、その時の桜島の古里温泉にも立ち寄り入浴したことがあると言っていたが、桜島シーサイドホテルに入った後は、このホテルじゃ無かった気がすると呟いた。さくらじまホテルの方だったのか、あるいは既に廃業したもう一軒だったのか。
とにかく桜島シーサイドホテルに車を停めると、外観にちょっと不安になった。
昔は立派なホテルだったんだろうと思うけど、かなり古くてまるでやっていないかのように見えたからだ。もちろん駐車場にも他に車は停まっていない。
場所柄、ひたすら灰をかぶるはずなので、どうしても外観や無造作に玄関周辺に置かれた植物が色あせて見えるのも仕方ないのだと思う。
しかし自動ドアは開いて、中はちゃんと営業していた。ホテルの人の感じも良い。
お風呂はフロントの正面の階段を下りると教えてもらって、やっぱり古そうな廊下を進むと、やがて男湯と女湯の入り口があった。でも露天風呂はもっと先みたいで矢印がある。繋がっていないなら露天風呂から先に行くか。何しろこの桜島シーサイドホテル、有名なのは海の見える露天風呂のはずだから。
露天風呂の表示の通りに館内を進んだら、裏口みたいなところから外に出て石段を下りるようになっていた。
本当にこのルートでいいのか?
石段はかなり急で、このホテルがあるのは砂浜のように波打ち際に近い場所ではなく、むしろ溶岩の台の上のような立地なのだと気付いた。石段を下りるごとに海がせり上がってくる。風が吹いて髪の毛が顔に掛かる。
石段の下には思ったより殺風景な露天風呂が一つあった。
コンクリートで固めた屋上みたいなスペースに、海ぎりぎりじゃなくて少し離した位置に四角い露天風呂。露天風呂のすぐ隣には男女別の入口の付いた脱衣所の小屋。
え、ええーっ、ここの露天風呂って混浴だったの? 知らなかった。
といっても、脱衣所は男女別だし、お湯は塩泉によくある濃い渋めの緑色で入ってしまえば見えない、何より今他に誰も余所のお客さんがいないんだから、まあ言うなれば貸切状態。
浴槽は多少岩など配置してあるが、基本的にはコンクリの四角いもので、そのものには風情はあんまり無いが、入ってみたらそんなことは気にならなかった。
とにかく目線の高さに水平線。
凄い凄いと声を上げたくなる絶景。これは素晴らしい。想像以上。
ちなみに場所が桜島の島内なので桜島そのものは背後で見えないが、水平線には端正な開聞岳も見えて素晴らしい景観。
お湯の色は先ほども書いたように典型的な塩泉系の濁り湯。
濁りの度合いはとても強くてお湯の中は全然見えない。
気持ち熱めの適温。湯口のお湯の流れる辺りは赤茶色に染まっている。
入った途端にこれはあったまりそうなお湯だなと思ったが、そのまんますごくあったまる。長く入りっぱなしはきつい。
そうそう、臭いはとても鉄っぽい。お風呂に近づいたとたんに強い金属の臭いがかげる。
二人で入っていたら男性の入浴客が一人やってきた。
流石にいくら濁り湯でも出入りの時は厳しいので、その人が脱衣所に入った段階で上がることにした。
もう景色もお湯も十分堪能したので。
でも男女別の浴室も気になったので寄ってみた。
驚いたことに男女別の方でも内湯の他に露天風呂がついていた。ちょっと得した気分。
こちらの露天風呂もこれまた素晴らしい景色で・・・と言うか、混浴露天風呂の景色をもうちょい上から眺めている感じ。
混浴に入れなければ大きさこそ小さ目だけど、男女別の露天風呂でも景色は満足できる。
浴槽からお湯はじゃんじゃん溢れ、溢れたところは床が赤茶色に染まっている。
お湯そのものは混浴より鮮度が高そうに思えた。
湯上りはやっぱりぽっかぽか。指の先までよく温まっている。
寄って良かった桜島シーサイドホテル。
あとはもう少し天気が良ければ申し分ない。
桜島シーサイドホテルの玄関を出たところで見上げると正面の石垣の上に桜島のてっぺんが見えていた。
いくら雲が厚くても、あの頂の右側からもくもく出ているのは噴煙だよねぇ。ものすごく色が濃いもの。
火山の麓に集落があって、観光ホテルがあって、人が生活している。こんなに噴煙が近いのにと思うと驚く。
地元の人にはもう慣れっこなんだろうな。