渋い温泉だった。
外観もだが、受付がまた渋い。
男湯と女湯は入り口から別で、その間に受付の小部屋があるのだが、その受付は無人で、炬燵の上には灰皿と湯のみと料金入れの空き缶が置いてあるだけ。
えーと、管理人さぁ~ん。
辺りをきょろきょろと見回したが誰もいない。
パパがこの缶に入れればいいんだろうといったん小銭を取りに車に戻り、お釣り無しの二人分の料金を入れた。
脱衣所の分析表もちぎったガムテープで壁に貼ってある。
浴室もいい感じに錆びている。錆びていると言うのはつまり、金属臭のする源泉が床や壁の一部を染めているのであって、浴室全体の使い込んだ感じが共同浴場らしくていい。
浴槽は縁がレンガの長方形のもので、途中に仕切りがあり大小二つに分けてあるが、その二槽であまり温度差は感じない。
どちらも同じくらいお湯はぬるい。だいたい体温ぐらいの温度。
ぬるいのが苦手なパパは、多分男湯の方でぬるすぎるとつぶやいていることだろう。
お湯は結構泡が多くしゅわしゅわしている。
臭いも鉄っぽいが錆びた鉄ではなく鮮度の良い金属臭。
ところでお風呂の底がごつごつしていて痛かった。もともとの浴槽の底が凸凹なんじゃなくて、析出物でごつごつになってしまったのかもしれない。
色は薄く白濁り。湯の花も結構ある。
コップがあったので飲んでみると温泉にしては濃い味に驚く。
じゅわっと来て、甘みと苦みと塩辛さ。わりと美味しいかも。
なお、湯口で泡がつぶせないほどではないので、泡付きは妙見石原荘の内湯には負けるかなと思った。
ぬるいので冬には寒いが、時間が経つとあったまってくる。
入っている時や、上がった直後ではなく、上がって少し経った頃にあったまっていることが実感できるお湯。
それにしても上がって帰る時にも管理人はいっこうに戻らず。
最初から最後まで受け付けは無人のままだった。