◆◇レンタルキャンピングカーで北海道◇◆
北海道キャンプ旅行記
港を出て速度が上がるとカモメたちは次々と船を追って飛んできて、レナがねじり揚げを放ると器用に空中でキャッチした。
どいつもこいつも食いしん坊でしまいには手に持って差し出しても上手いことさらっていく。
船が埠頭を離れると切り立った岸壁を持つ高島岬と中腹の鰊御殿、そして先端に建つ日和山灯台が見えた。さっきまであそこにいたのだ。
岬を回り込むと反対側はぽっかりと二つの大きな洞窟が口を開けている。
やがて陸地側には丸い展望スペースを持つホテルノイシュロス小樽が見えて、海側には大きな岩礁がある間を通過した。
左の画像 高島岬。先端の紅白の建物が日和山灯台で、中腹の屋敷が鰊御殿
右の画像 鰊御殿と口を開けた洞穴。さっき鰊御殿の方から見下ろしていた裏側にあたる
そこから先の景色も凄かった。
小樽近くの海がこんなに奇岩ぞろいの景色だとは知らなかった。
ざっくりと土砂が滑り落ちたような薄黄色の谷地や鋭く切り立ついくつもの槍のような岩山、直滑降する細い滝など。
特に土砂崩れの跡はなまなましく、パパが船頭に聞いた話ではつい先月崩れたばかりだそうな。
崖から崩れた土砂が三角に堆積している手前に三軒ばかりの建物が見えて、さらにその手前の大岩に張り付くように何か人工物が見えた。
岩の中腹に横に誰かが彫刻刀で削ったような遊歩道らしきものが見え、その岸壁の遊歩道は赤い手すりが掛けられ、岩のちょうどど真ん中辺りに竜宮城の入り口の様な古びた建造物がある。なんだろうあれは。
さすがに海から見てきたこの奇岩で縁どられた海岸線を祝津からここまで来る道は無かったと思う。
すると陸側から直接この竜宮城に来る道があるのか。
帰ってきて調べたところ、あのぽつりとある竜宮城の入り口のようなものはかつて栄華を極めたオタモイ遊園地のただ一つ残された名残であったと知った。
あの岸壁に清水の舞台の様な豪奢な大旅館が建ち、海岸はリゾートとして整備されていた。昭和初期に個人でそれを作り上げたのは小樽の加藤秋太郎という人物であったが、オタモイ遊園地は大戦、その後の火災と不運な歴史をたどり、人々の記憶からも消えて行った。
すぐ隣の土砂崩れの後を見ても、到底今は行かれる場所ではない。
あのまま残された竜宮城の入り口も朽ちるに任せざるを得ないのだろうか。
遊覧船はだんだん竜宮城跡から遠ざかり、やがて見えなくなった。
崖に張り付く竜宮城の入り口のようなオタモイ遊園地の名残