5.雪の月夜野温泉
雪が降りしきる中、管理人ご夫妻に伺ったとおりのバラック建ての
温泉センターはあった。
月曜日だというのに小さめの駐車場は満車に近い。半分ほどが軽トラック。みんな地元の方たちだろうか。
受付で最初に問われるのが、「町内?町外?」
町外でも大人300円。とても安い。
入るとまず大広間休憩室がある。ここもまるで仮設のような質素な感じ。
部屋の隅にやかんがおいてある。
お茶を飲むなら勝手にやってくれという感じが、なんともいえない。
脱衣所には湯上りにそのまま休んでいるおばあちゃんが二人。
カナとレナが入っていくと、
「おやまあ、いくつ? 名前は?」
カナはちゃんと答えられるが、恥ずかしがりのレナは母の足にしがみついたきり離れない。
赤ちゃんじゃないんだから、離れなさいっ(笑)。
浴室はほぼ満員だった。
三つほどあるカランはひとつを残して使用中。内湯は5、6人入っていっぱい。窓の外に見える露天風呂の人影も4、5人…。平日のお昼過ぎ、人家もあまり無いような奥まった温泉とはとても思えない混みようだ。
たぶん全員地元の方。それも毎日ここに通っているような方ばかりのようだ。
何しろ会話も、「今日は違う時間に来たから、(入っている顔ぶれか違って)違うお風呂に来たかと思っちゃったわ」なのだから。
設備的には何も無さそうだが、液体ボディーソープだけは備え付けてある。カランもシャワーは無い。押すと一定量のお湯が出るタイプだが、出が悪いので子供たちを洗うにも頻繁に何度も押さないとお湯が足りなかった。
洗っている間から、何かにゅるにゅるとするものがある。
たぶんカランのお湯も温泉なのだろう。
洗い終えた子供たちに、先に入っていいよと言う。その隙に自分も体を洗おうと思ったのだが、滑りやすい泉質だからか、姉妹だけで浴槽に近づいた二人に入浴中の方々が寄ってきて、滑るよ、とか、こっちから入りなとかせっせと世話を焼いてくださった。
群馬では珍しく、かなりにゅるにゅるするお湯だ。
指の間をにゅるりと滑る感覚がある。
他は無味無臭。透明でごくたまに湯の花らしきものが浮いている。
ちょっと熱めだが、まあ適温。子供たちも嫌がらずに入る温度だった。
湯口には飲泉コップもおいてある。
露天風呂は窓を隔ててすぐ隣なのだが、このアプローチは変わっている。
ドアは浴槽より高いところにあるので、お風呂の上を木の橋が渡してあって、そこを通って出て行くようになっている。
もしつるりと足を滑らせたら、お風呂の中に転落だ。