1.風の朝
最終日 2004年2月23日(月)
風の強い朝だった。
昨夜の大雨は嘘だったかのように、広いベランダは乾いていた。
昨日お昼を食べたベランダのテーブルと椅子は、強風にあおられて位置がずれていた。
雨の名残は軒下に置いてあったサンダルの足を乗せる部分に張った透き通った氷だけだ。
冷え込んだ朝で、空は晴れているもののときおり綿毛のような雪がちらつくこともあった。
昨夜、アイスキャンドルをお見せした時に、管理人ご夫妻は、明日の予定が特に決まっていなければ、遊びにいらっしゃいと誘ってくださった。
ご自宅に招待?
本当によろしいのですか?
私たちのお気に入りの榛名湖の宿は来月末で役目を終える。既に買い手はついていて、4月からはまったく状況が変わってしまうようだ。
いつも行く度に温かい笑顔で歓迎してくれる管理人さんご夫妻は、本年度いっぱいだと思ったら、この2月末で仕事を終えられるのだそうだ。
この宿は冬季は週末しか開いていない。この土日と、あとは来週。それで全て。
3月にここに来たとしても、もう会うことは出来ないのだ。
私たちはこの宿がなくなってしまうことを悲しんだが、管理人さんご夫妻はもっともっと悲しい思いをしているのだろう。