1.最後のドアが閉まるとき…
最終日 2004年3月29日(月)
風の凪いだ静かな朝だった。
対岸の山は、鏡のように澄み渡った湖面に逆さに映っていた。
今朝はみんなで鳥を見に行こうと、7時過ぎには準備をして双眼鏡を手に表へ出たが、声が聞こえるばかりでついに姿を見つけることは出来なかった。
湖のみえる宿の周辺は、ちょうど釣り客相手の施設や食事処で賑わう岸辺とは反対側にあり、静かで落ち着いた雰囲気だ。
たぶん俗っぽく賑やかな対岸にこの宿があったら、これほどは気に入らなかったに違いない。
ここの隠れ家的なプライベートな感じが気に入っているのだ。
もうたぶん、私たちは榛名湖に泊まることはないだろう。
他の宿もキャンプ場もあるけれど、どこに泊まってもこの湖の見える宿と比べてしまうから。
本当は夏に一度来てみたかった。
思えば見慣れた榛名山も、緑に生い茂っているところはほとんど見ていない。
8月には湖上に花火も上がる。どんなにか綺麗だろう。