さて、前回ではチューリヒの街に着き、いよいよトラムに乗ってホテルを目指すことになりましたが…。


*** アルプスは今日もお天気 ***

第3話 チューリヒの丘の上へ



 私たちが泊まるホテルはチューリヒの街の中心部からかなり外れている。ガイドブックなんかに載っているチューリヒの地図は、中央駅から下の方に向かって広がっているが、ホテル・リギホフは上の方にあるので、駅から3kmだそうだが、まず詳細地図には載っていない。周りは住宅街なのだそうだ。

「小銭が無くて切符が買えないなら、両替すればいいじゃない」 「どこで?」…うっ。右も左もわからない英語圏でさえないこの大都市にようやくたどり着いたばかりなのである。そういわれると、いったいどこで両替すればよいものか…。

 とりあえず、駅に引き返す。だけどおもてはまだ明るくても既に夕刻。地下道にあるお店はほとんど閉まっている。
「タクシーで行こう」と、ダンナは言った。でも…。
「タクシー乗り場ってどこ?」 うむむむ〜、てな顔にダンナはなった。
 結局、一軒だけ開いていた本や雑貨を売っているお店で買い物をすることにした。晴れているチューリヒの街を見下ろした絵はがきを2枚。「晴れている」というのがポイントである。

トラム乗り場にて


 小銭ができたところで、再度トラム乗り場に引き返す。今度は無事3人分の切符が買えた。見ているとトラムはとっても頻繁に発着している。そしてスピードもゆっくりで、停留所名もはっきり読める。少々繁華街から外れたホテルでも、なんとかなるものだ。初心者もぜひ怖がらずにトライしてみよう。
 10番線のトラムは、駅を離れ、ぐんぐんカーブして坂を登り始める。スイス工科大学の停留所を過ぎて、まだまだ登る。さながら登山電車かケーブルカーのようであると書くと流石に言い過ぎかもしれないが、ほんとにすごい坂道なのだ。とてもとても歩くことはお薦めできない。ましてやスーツケースを引っ張ってなど…。

 やがて、我々の泊まる今夜の宿が見えてきた。ホテル・リギホフ。
 た、確かに…、お薦めできないと仰る方がいらっしゃるわけがわかるような気はした。4つ星だというのに、ホテルの外観は、いまいち…。白い飾り気のない漆喰の壁にオレンジの品のないホテル名が光っている。建物自体がよく言えばシンプル…、四角くて面白味がない。ホテルではなくたぶん一般のアパートや店舗なのだろう、回りの建物がみんな由緒ありげな古い煉瓦づくりだから、なおさら感じるのかもしれない。
 とりあえずチェックインだ。
 フロントでキーをもらう。フロントの横に扉がついている。それを横目で見ながら階段を登ったが、2階にも3階にも同じ位置に扉がついていた。開けてみると案の定、それは古式ゆかしいエレベーターであった。自分で扉を開けて入るのである。中の扉はないから、動いている間は、表側の壁もいっしょに動くという代物だ。ちなみに我々が泊まった中で、エレベーターがついている宿は、スイスではここだけであった。

じ、次回は、チューリヒを出るのか、そ、それともまだチューリヒ編が続くのか?

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