みなさん、こんにちは。毎度おつきあいいただき有り難うございます。家族3人でスイスを訪ね、現在2日目の午後であります。チューリヒからベルンを経由してベルナーオーバーラントのラウターブルンネンにたどり着き、これからトリュンメルバッハの滝に入っていくところです。
ラウターブルンネンとシュテッヒェルベルクの間にあるトリュンメルバッハの滝は、氷河融水の滝、地中の滝として、有名である。どういうものかというと、アイガー、メンヒ、ユングフラウの3山の氷河から流れ出す膨大な量の水が、そのままシュタウプバッハのような普通の滝になればよかったものを、たまたまそこの岩が、とてつもなく硬かったのだか、表面にあらわれず岩の間を突き破って、流れているのである。
その結果、1秒間に2万リットルという水が、奇っ怪な岩を穿ってその間を紆余曲折と縫って、あるところでは狭い孔から飛沫を上げて吹きだし、あるところではコークスクリューとねじれて、ほとんど芸術的にエネルギーを噴出させているのである。
入り口でお金を払うと、ぽっかりと洞窟が口を開けている。洞窟の中に入ると、すぐエレベーター乗り場がある。エレベーターというからには、垂直に登るのかと思いきや、この四角い箱はなんと斜めに登っていく。一番奥に立っていると、真っ暗な中、斜め上方に行く先の灯りがぼんやりと見えて、遊園地の乗り物のようだ。ワクワクも増長。
エレベーターが上に着くと、いったん外に出る。滝は10層の構造で、エレベーターの出口から上に4ヶ所、下に4ヶ所のビューポイントがあるのだ。階段が上と下についていて、私たちはまず上に向かった。
通路は左側が絶壁、右側には手摺りがついていて、足の下にはごうごうと水が流れている。いや、ごうごうという音は、もっと先から聞こえてくるようだ。通路は左にカーブしている。その先に何があるのだろう。
やがて逆巻く渦と飛沫が見えてきた。まっすぐに流れれば苦労もないものを、何故かわざわざS字にカーブして、岩壁に激突している。通路は今度は大きく右にカーブして、眼下の流れの角度を変えていく。ダンナは早速三脚を組み立て始める。好きだねぇ。
通路はそのまま坑の中へ続いている。
水で濡れて滑りやすい岩の階段をずっと登っていくと、時折ぽっかりと視界が開けて、窓のように開けられた岩の孔の向こうにエネルギーそのものが猛り狂って渦巻いている様子を見ることができる。音も凄い。ほんの目の前にダーっと流れ落ちる滝を見るポイントでは、目を見張っているうちに細かい飛沫を浴びてずぶぬれになる。それにしてもよくもまあこんなところに観光用の通路を掘ったものだ。富士山の氷穴とかに入ったことのある人は、もう日本じゃばかばかしくてお金を払う気にならないに違いない。何層にもなった滝は、それぞれ個性的で、毎回、次があらわれる度に驚かされることになる。
一番奥は行き止まりで引き返す。ナトリウムランプでグリーンやオレンジにライトアップされた滝は本当にきれいだ。でも滑らないように注意してね。
エレベーターを降りた広場まで戻ってきたら、今度は階段で下に降りてみよう。まだまだ見所はあるのだ。
滝もいいのだけれど、この外に取り付けられた階段あたりから見るラウターブルンネンの谷もなかなかのものなのだ。谷底からでは全貌はわかりにくいが、ここから見ると、両側がぐうっとせり上がっておそろしく深くまた美しい造形を創り出していることがわかる。低く垂れ込めた雲のさまも幽谷の美というに相応しい。とにかく日本では絶対に見ることのできない光景だ。
少し行くと、また轟音が響いてくる。ダンナは写真を撮るのに夢中。そんなに撮ったって、写真では迫力が判らないよ。せめてこの音が入ればな。
一番最後は横からしぶきをあげて吹き出してくるポイントだった。このころにはフードをかぶっていても前髪はびっしょりである。でも楽しい。雨の日には雨の日のアルプス。母も「すごいわねぇ」の連発。世界にはこんな驚異もあるんだ。何てったって4千メートル級の3山から一気に下ってきた滝だもんね。
こんな狭いところをよく流れるなぁ。落ちたらまっさかさま、一巻の終わりだぁ。
3人で興奮しまくったまんま、再び静寂の地上に下り立つ。
バス停まで歩く小道の左を静かな小川が流れている。
「どーしてアレが、たった数秒後にこんな大人しい小川になっちゃうんだ」とダンナ。…まったくその一言につきるね。
フツーはこれで2日目の午後のアトラクションが終了だから、翌日に跳ぶはずなのですが、実はまだ続くのです(えーかげんにせーよ、と夫)
次回、「おいしいぞ!ラウターブルンネンの巻」となるか??