道の正面にピラミッドが見えてきた。
ピラミッドと言っても人工物ではない。
人工と見がまうほど綺麗な形のウォルシュズ・ピラミッド山。
あの山を越したところにゴードンベールの三叉路があり、右へ行けば
ケアンズ、左へ行けば初日に私たちが登ったギリスハイウェイだ。
今日は右へ行く。
ゴードンベールを過ぎればまもなくケアンズだ。
ゴードンベールの北6キロのところにkammaという小さな町があって、ここから右に入るとヤラバーへ向かう道。
ヤラバーはケアンズの南にある半島。
私たちが当初泊まることを検討したフィッツロイ島はこのヤラバーの沖合にある。
ヤラバーというのはケアンズ近郊ではたぶん最も大きなアボリジナル・ランドだ。
アボリジニというのはオーストラリア大陸の原住民。
入植してきた白人に迫害され苦難の歴史を歩んできた。
こうしてケアンズ周辺を旅していてもときどきアボリジニの人を見かけることがあるが、どの人も決して裕福に見えない。余所の大陸や島から来た人々と元々価値観の違う生き方をしていたはずだが、今は同じ価値観を持たされ、しかもその価値観において価値のあるものは与えられずにいる。
昔、ウルルに行ったとき、砂漠の道ばたでアボリジニに呼び止められ、アルコールをねだられたことを思い出した。この人をこんな風に変えてしまったのは何なのか。今でもいたたまれない気持ちになる。