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** ケアンズと森とビーチの休日 **

14.Bちゃんの浴衣姿




 




 オーストラリア人は浴衣が好きだ。
 外国の人はみんなそうかもしれないけど、如何にも「日本」というエキゾチックな衣装にとても興味があるみたいだ。
 本物の着物なんて高いし荷物になるからおいそれと旅行に持ってこられないけど、浴衣なら簡単。帯もかさばらないように兵児帯で十分。
 三年前にポートダグラスのサンデーマーケットで子どもたちに着せたら、予想以上に好評で、いろんな人に話しかけられた。
 一昨年はこのウォンガリンガのプールサイドでやっぱりロラリーが喜んでくれたので、今年はぜひBちゃんにも着せてあげようと思っていた。

 ただ、我が家は日本ではほとんど浴衣を使わないので去年は浴衣を新調しなかった。
 二年前の浴衣では、もうサイズが合わない。当時カナが着ていた浴衣がレナにぴったりなくらいだ。
 そこで新しいものを探したが、シーズン的に3月4月は浴衣なんて置いていない店がほとんど。ようやく近所の商店街の和服屋で倉庫から出してもらった。

 私はカナははっきりした色の方が似合うと思ったが、本人が選んだのはパステルピンクの浴衣だった。
 まあ着るのはカナなんだから自分が気に入った色柄でいいんだけど。
 カナは背も低いがとにかく痩せているので、サイズだけでは測れず、試着しながら決められたので近所の店で買うことができて良かった。同じ120-130サイズの浴衣でも、長さも横幅もメーカーによって全然違う。

 ただ、そんな風に自分で選んだ浴衣だからこそ、自分より先にBちゃんに着せるのには抵抗があったらしい。
 私もまだ着ていないのに・・・というカナを説得して浴衣と帯をプールサイドに持っていった。
 それからいつもの折り紙も。

何故かつい夢中になって折り紙を始めるカナとレナ



 パパが何かを取りに部屋に戻ってしまったので、私はBちゃんに浴衣を着せる前に折り鶴を教えた。
 彼女は飲み込みがよく、私が折るとおりについてくる。一番難しいところだけ少し手伝って、後は一人で織り上げた。
 それからパパが戻ってきたので浴衣の方も着せてみた。
 ぬれた水着をタオルで軽く拭いて、その上から着せてみる。
 シャイなBちゃんはどうしよう、本当にいいの?という表情をしている。
 でも嬉しかったようで、カメラを向けたらポーズを取ってくれた。

 その一部始終を見ていたギャラリーがいた。
 私たちの隣の棟の一階に泊まっている老夫婦グループのご婦人方だ。ちょうど今日もプール近くの外テーブルで読書やおしゃべりに勤しんでいたところだ。
 「Bちゃん、できたよ。お母さんに見せてきたら?」とパパが言うと、Bちゃんは逡巡した後ぱっとオフィスの奥へ駆けていった。
 もうギャラリーはやんややんや大喜びだ。

 ロラリーは部屋で友人と談笑中だったようだ。
 Bちゃんがなかなか戻ってこないと思ったら、Bちゃんはロラリーと彼女の友人を伴って現れた。
 娘が浴衣を着ているので吃驚している。
 パパが「ビューティフル」と言うと、ロラリーはごくまじめな顔で「あら、娘はエブリディ、ビューティフルよ」と言うので可笑しくなってしまった。

 Bちゃんはもちろん浴衣なんて着馴れていないので、座るとき、わざわざ浴衣の裾を左右に押し広げているのが面白かった。
 日本人だと裾が割れないように隠す方に動かすのにこういうところも違うんだなという感じ。
 流石に窮屈だったのか、みんなに見せた後彼女はもう着替えてもいい?と心配そうに聞いてきた。

足下のポーズがオージーっぽくて可愛い





9-15満月夜へ続く


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