** ケアンズと森とビーチの休日 **
レナの方がちょっと辛そうだった。
彼女はこれまで船で酔ったことは無いが、車ではいつも酔うので基本的に乗り物には弱いタイプ。
パパ同様、今回も出発前に酔い止めを飲んできた。
今回二人が飲んだ薬はパンシロントラベルというオレンジ味のチュアブル。
今までレナは子供用のトラベルミンやセンパアを使っていたのだが、どちらも体質に合わないのかいまいち効き目が良くなかった。おまけに味も嫌いらしく飲ませるにも一苦労。それが今回のパンシロントラベルは水無しで飲めるだけでなく味も美味しいらしい。レナがあまり嬉しそうになめるのでカナまでなめたがったぐらいだ。
このパンシロントラベル、そんなわけで車酔いには結構効果があったようだが、流石に船で揺られると多少気分が悪くなってきたらしい。
「ママ、寄りかかっていい?」
「いいよ」
船の二階デッキの床にぺたりと座り込んだ私にレナは寄りかかってきた。
「ママ椅子だね」とカナが言う。
ざぶんざぶんと波を乗り越え、ぐいんぐいんと船が揺れると、レナはいつの間にか寝付いてしまった。
ママ椅子がママベッドになってしまった。
ちょっとこりゃ、身動きとれないね。
足が痺れてきたのでパパに救いを求めようとしたが、パパはデッキの床に大の字になって寝ていた。
ありゃ・・・直射日光を浴びながらその角度で寝ていると後で恐ろしいことになるぞ。
といってもパパもできるだけ寝かせておいてやらないと可哀想だ。
パパが目を覚ますまで私もこの体勢をキープするしかない。
「カナ、舳先へ行ってもいいよ」
さっきからカナが舳先を出入りする人たちを羨ましそうに見ていたので言った。
「但し気を付けるんだよ。必ず手すりに捕まりながら移動してね」
「判った」
カナが行こうとしたところで、パパが目を覚ましたので交替を申し出た。
「ちょっとレナのベッドになっていてくれない? 私はカナを見ているから」