** ケアンズと森とビーチの休日 **
船は桟橋を離れ、また航行を始めた。
いつの間にかフェリーの後ろにロープでボートが取り付けられている。
進んでいる場所はケープ・リチャーズから少し戻って、先ほどのキノココ島とヒンチンブルック島の間にあるミッショナリー・ベイの湾内だ。
適当に進んだところでエンジンがストップした。
キャプテンがデッキに登ってきてみんなを集める。
後方をじっと睨め回し、一点を指さした。
「ジュゴン」
えっ、どこどこ。
カメラを持って手すりに近づいた私を、キャプテンはわざわざ一番前に連れてきてくれた。
かなり離れた海の上に茶色のものが見えた。
見えたけどすぐに潜ってしまう。
全員が目で追う。
もう少し左の方にまた顔を出した。
でも呼吸するとすぐに潜ってしまうらしい。
あれよあれよと言ううちにジュゴンは遠ざかっていってしまった。
「カモノハシに比べれば、確かに見たなって感じだったな」とパパ。
カモノハシもジュゴンも、また見たことはないけどクジラやイルカも水面で呼吸しなくてはならないから水上からのウォッチングが可能なんだな。
何だか勝手にジュゴンって白っぽいイメージがあったけど、実は大人のジュゴンは茶色いことを初めて知った。