** ケアンズと森とビーチの休日 **
桟橋からリゾートのスタッフが近づいてきた。
どうやら今ここで降りるのはヒンチンブルックアイランド・ワイルダーネスロッジ宿泊者だけのようだ。
オージーと東洋人のカップルが一組降りた。東洋人は髪の長い女性で、日本人ではなさそうだ。
たまたまなのかもしれないけど、現地ツアーでは年輩者を含めて奥さんが東洋人、旦那さんがオージーというカップルをよく見かけるような気がする。逆パターンにはまだ会ったことがない。
人間の他に、ロッジで使用する食糧や備品も降ろしていた。やたらとNERADAティーの箱が目に付いた。ダンク島行きフェリーでも思ったが、こうした船は日帰り観光客だけでなく、リゾートの宿泊者やリゾートの食糧を運び、帰りには廃棄物も運ぶ役目を持っている。一日観光ツアーのお客さんが少なくても、こうした需要があるから運営が成り立っているんだろう。
誰かが桟橋の方で呼んで、みんな桟橋に集まっている。
私たちも行ってみよう。
ヒンチンブルック島のリゾート宿泊者だけがここで降りる
桟橋脇の海の中をみんなで指さしてわいわい言っている。
何か来ているらしい。
ゆらりと茶色のものが動いた。
フェリーのスタッフが餌を取りだして水面に近づけた。
バッシャーーーン
巨大なナマズのような魚がそれに飛びついた。
お世辞にも美しいとは言えないまだらの顔、離れた目、分厚いくちびる。
「今のは何?」
「スライだよ」とスタッフ。
「ああ」とパパ。ヒンチンブルック島一日ツアーのリーフレットに「Sly」の餌付けとあったけど、あれがスライか。
レナに今の魚、どれくらい大きかった? と聞くと、こーんなに、と両手を広げてくれた。