** ケアンズと森とビーチの休日 **
マリーナを出ても前方にも後方にも陸地が見えるので、海に出たという気はしない。
この辺りはヒンチンブルック・チャンネルと呼ばれ、大陸とヒンチンブルック島を隔てる内海、というか、河のようなもの。
外海ではないので波も静か。ほとんど船は揺れない。これなら船酔い体質のパパも心配ないようだ。
上空の空は綺麗に晴れているが、陸地の上にはぽかりぽかり白い雲が浮いている。
特に山にはよく雲が引っかかっている。
山に雲の影がそのままの形で落ちているのが面白い。
水面が光を反射してきらきら光っている。
前方に最初に見えてくるのはヒンチンブルック島の北端、Hecate
Pointだ。ぎっしりと表面がマングローブに覆われている。
その北端を回り込み、正面に見えてくるのがヒンチンブルック島の隣に浮かぶ小島Gooldアイランドと、さらにその手前のもっと小さな島Gardenアイランドだ。
この辺りの海はとても浅くなっていて、時々干潟のようなものが海面に見えることがある。
船は浅瀬に乗り上げないように決められたコースを通る。要所要所には目印となるマーカーが設置されていて、島影とマーカーの重なり具合などを確認しながら進んでいく。
子どもたちは地図で見るGooldアイランドの形がポケモンのキノココに似ているというのでキノココ島と呼んだ。
船の進行もほぼ直線でキャプテンも少し暇そうに見えたので、私は船に置いてあるゲストブックからNaomiさんの書き込みを見つけて見せに行った。
「これがさっきの写真の私の友人」
キャプテンは、いつの書き込みと私に聞いた。ゲストブックには日付を書く欄が無く、日付が入っているものと入っていないものとまちまちだったから。
「去年の8月」
「去年の8月か・・・」
ふーむとキャプテンはちょっと遠い目をした。何か思い出そうとしているようにも見えた。
船は右にヒンチンブルック島、左にキノココ島を見ながら進み、ごつごつとした岩場を回ってケープ・リチャーズに到着した。
白い桟橋が近づいてくる。
どうするんだろう、私たちはここで降りるんだろうか?