** ケアンズと森とビーチの休日 **
パパが受付をしている後ろで私は子どもたちを見ていた。
すると荷物を持った男性が後ろを通過した。
すれ違いざまに見た顔は、確かにどこかで見た顔・・・。
「あっ、今の人だ」
Naomiさんの写真にあったオージー。確かにあの人だ。
すぐに追いかけて呼び止める。
写真を取り出して指さした。
「これはあなたですか?」
「Oh」
オージーは吃驚して私の顔を見た。
でもあまりに急だったのでどう伝えて良いか言葉も考えていなかった。
えーと、ど、どうしよう。
正面がマリーナ、左手がヒンチンブルック島行きフェリーの受付
どうやって感謝の気持ちを伝えれば良いか昨夜も考えた私はとりあえずバッグに折り紙を入れてきた。
折り鶴なら得意中の得意。これを渡してみよう。
写真のオージーは2mほど先の桟橋の入り口で知り合いと話し込んでいる。今がチャンスだ。
ところが立ったまま大急ぎで一羽折り上げたものの、その隙に彼は桟橋の先へと歩いていってしまった。
そこへ受付を終えたパパが振り返った。
「どうしたの?」
「今の人だよ、今の人がNaomiさんの写真の人なの」
心配しなくてもその人は今日のツアーのキャプテンだった。
私たちが乗る船の入り口で待っていてくれた。
私は鶴と写真を出した。
そして写真のNaomiさんを指さして「これが私の友達。そして彼女からあなたに、ありがとうを伝えてくれと頼まれたの」
私の英語はたいそう怪しいものだったが、後からパパも同じ内容を補足してくれたから伝わったと思う。
彼は感慨深そうに写真と鶴を受け取った。