夜中にレナが泣いた。
見に行くと、どうやらベッドから転落して、戸棚の角に頭をぶつけたらしい。
パパが落ちないように周りにクッションでバリケードを張り巡らしたのだが、その隙間からやっぱり落ちたらしい。
こういうときに落ちるのはカナではなくてレナと決まっている。昔から。
五日目 4月30日(月)
ふと目が覚めると夜明け前だった。
隣のベッドは空っぽ。
パパは早速早起きしてビーチに向かったらしい。
ミッションビーチの夜明けの写真撮影は滞在中のパパの日課だ。
そのために買ったばかりのカメラの使用説明書もスーツケースに入れておいてと頼まれた。
読んじゃいないくせに!
パパが三脚とキヤノンのPowerShot
S3 ISを持っていってしまったので、私はサブ機であるオリンパスCAMEDIA μ-30
DIGITALを掴んで後を追った。もちろん裸足で。
空はオレンジ色に染まっているがまだ太陽は昇っていないようだ。
階段を降りて振り返ると、隣の8号室のバルコニーに赤ちゃんを抱いたお父さんが立っているのが見えた。たぶん後で挨拶する機会があるだろう。今は日の出に間に合うように急がなくちゃ。
木立の間から覗くと、パパは波打ち際に近いところで三脚を立てて太陽が昇るのを待っている。
こちらには気づいていないようで、何かカメラをいじっている。
空は薄雲が掛かっているのでピンク色が入り交じったオレンジ色をしていて、海も同じ色に染まっている。
パパがふと振り返って、私に気づいた。
よほど驚いたらしく、まるでマンガのようなリアクションをしてくれた。
「び、びっくりしたぁー、こっそり覗いてないでよ」
こっそり覗いてなんていないよ。そっちが気づかなかっただけじゃない。