** ケアンズと森とビーチの休日 **
私はまだ迷っていた。野湯は野趣溢れるけど必ずしも快適ではない。日本のようにある意味、野湯に理解のある土地柄ならいいけど、外国でいきなり道ばたで入るのはやっぱり抵抗あるよー。一応、私、女性だし。
そもそも着替えるところから悩むところだ。駐車場周辺にも人が出入りしているから車の中で着替えるのも難しいし、水着に着替えるだけなら何とかなるとしても、その後ぬれた水着を脱いで洋服に着替えるのはもっと大変だ。昔、そんなこんなでなかなか着替えられず、北海道のカムイワッカ温泉や相泊温泉の野湯に入った後、結局酷い熱を出して帰りのフェリーの中でうなされ続けたことがある。これってかなりトラウマになっている。
そんな私の気も知らず、パパはさっさと河原に戻って入浴に適した湯溜まりを物色し始めた。
ピクニックするオージーのすぐ目の前で湯溜まりを物色するパパ。オージーたちは興味津々。
河原でピクニックしていたオージーは、いきなりTシャツに海パン姿のジャパニーズがやってきてじゃぶじゃぶ小川の中に入っていったのを面白がって見ていた。
適当な湯溜まりを見つけた。これらは誰かが掘ったり土手を積み上げてお風呂状にした名残らしい。
「あちいなー」
手を突っ込んで考えている。
それから両手で川の水をすくって湯溜まりに流し込み始めた。温度を下げているのだ。
適温になったところでTシャツを脱いで寝転がる。
深さは寝ころんでぎりぎりぐらい。誰かがわざわざ置いたのか、頭を乗せるのに適当な石もある。
でもそう長くは入っていられなかった。
やっぱり底から湯が湧いているのでどんどん熱くなるのだ。
「あちーっ」
パパは身を起こした。
「もう限界」
パパはこの温泉、硫黄の臭いがしたと言っていたけど、両手ですくって臭いを嗅いだぐらいではするかしないかという程度だった。
肌触りはさらさらとする感じがある。
私は手を入れただけだけど。
今日の天気はまたまたこれでもかという見事な快晴。
なので本当に暑い。汗っかきのパパなどお風呂から出たばかりだと言うのに、いや出たばかりだからこそ益々暑くなってあっと言う間に汗だらだら。
私にとってもオーストラリア滞在中、一番暑く感じたのがこの日の
インノットだった。