** ケアンズと森とビーチの休日 **
まばらにユーカリの生えた林の中を舗装された小径が続いている。
真っ直ぐ歩くとすぐに川が見えてきた。川は谷を流れているので遊歩道からは少し距離がある。
遊歩道は下り坂で、川に沿って下流へ延びていた。
先の方から囂々と音が聞こえていた。
真昼の太陽はぎらぎらと照りつけ、目が回りそうだ。朝のローズガムズが涼しかったので私など長袖を着ていた。信じられないくらい暑い。
少し歩くと滝の後ろ姿が見えてきた。今見ている川は、すぐそこでがくんと落ち込んでいるらしい。
滝がよく見えそうな場所に展望台が据え付けてあって、数人の観光客が滝を見下ろしていた。
ようやく展望台に着いた。
「虹が見えるぞ」とパパが教えてくれた。
本当だ。ちょうど太陽の当たる角度が良いらしい。
滝の中央から右下に掛けて淡い虹が架かっている。
ミルストリーム滝はオーストラリアで一番幅の広い滝だが、一番落差が大きい滝はもうちょっと南にあるワラマン滝だ
一本の滝としてはオーストラリア一幅が広いと言われてもそうかなぁという程度の大きさではあるが、確かに今まで見た滝より迫力がある。
離れているから小さくまとまって見えるが、実際は相当大きな滝のはずだ。
何よりここも周りの景色がいい。
乾いたユーカリの林がいかにもオーストラリアらしい風景だし、滝の周囲に露出した地盤は柱状節理になっている。
車に戻る前にトイレに寄った。
駐車場の近くにトイレの建物があったので。
オーストラリアのトイレは屋外でも結構綺麗なところが多いので安心して使える。
ところがここの場合・・・。
清潔度に問題があるわけじゃなくて、鍵に問題があった。
トイレのドアの鍵が壊れている。
代用品は何だと思う?
石だ。
足下に適当な石が転がしてあって、どうやらそれをドアの前に置いて用を足せということらしい。
凄いなぁ。アバウトだなぁ。流石はオーストラリアだな。
仕方がないので石を置いて何とかした。
誰かが知らずに外から開けようとしたら、石にドアがぶつかってがくんとなって止まる仕組みだ。原始的すぎる。
出るときも足で石を転がして元の場所に戻しておいた。
あんまり可笑しかったんで石の写真も撮っておいた。