** ケアンズと森とビーチの休日 **
日が昇る少し前から森は急に騒がしくなる。
競うように鳥が鳴き出し、大合唱になる。
ホーホケキョじゃなくて、ホーホピチョンと鳴く鳥もいる。
なんて楽しい。森の中の家だからこそこんなに沢山の鳥の声が聞こえる。バルコニーに立ってずっと聞いていたい。
ふと気が付くと、バルコニーからすぐ左手に立っている木の葉から雫がこぼれ落ちていた。
朝露?
それともまさか・・・雨?
正面は遠くに雲海はあるもののほぼ快晴に近い。頭上も晴れているようだ。後方はツリーハウスが邪魔でバルコニーからは見えない。
雫の落ちる木の上を首を伸ばして見上げると、何か目に見える煙のようなものが流れてくる。
湯気?
パパが朝風呂にでも入っているから?
ところがこれは本当に雲で、隣の木にだけ雨が降っていたらしい。
一瞬にしてツリーハウス全体が霧のようなものに包まれて、5分もしないうちに抜けた。
私たちを包んだ雲はどこへ消えたのか。いつの間にか何事も無かったかのように晴れ空だけが残っていた。
今の朝靄が嘘でなかった証拠に、まだ隣の木の葉からは雫が垂れている。
水のめぐみを受けて、森全体が潤って生き生きしている。
この子はキイロミツスイかな? 実はこの角度で撮影できるのはツリーハウスの特権。
「昨日の小鳥ちゃんのお墓を作ってあげよう」
パパは言って、拾ってきた木の板に「小鳥ちゃん 天国でもピイピイ鳴いて下さい」と書いた。
「何で日本語なの」とカナ。
でも英語で書いても小鳥ちゃんは英語が読めるわけじゃないから。
パパが地面に穴を掘った。ちょうど小鳥が入るくらいの大きさに。
子どもたちは板に乗せて小鳥を運び、そっと穴の中に置いた。
土と落ち葉を被せて板を置いて、赤い花を少し摘んできて供えた。
「可哀想だよ。どうして死んじゃったの?」とレナ。
さっき屋根の上から流れてきたものはお風呂場の湯気ではなく朝靄だったが、パパは本当に朝風呂に入った。
一緒に子どもたちも。
楽しいらしくなかなか出てこない。
ローズガムズのツリーハウスには大きなバスタブがある。ジャクージ付きのこれもこうした森の家の売りの一つ。
広い窓からは羊歯の葉が見える。