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11.マランダの森のバードウォッチング




 




 「この森を見て何か気が付きませんか? どの木も幹がそれほど太くないのに背が高いでしょう。途中に枝もあまり無いと思います。これは芽を出したら誰より早く背を伸ばして太陽光を独占しないと生きていかれないからです。これらの木は最初のうちは凄いスピードで伸びるんですよ」
 なるほど。
 「自分で伸びないで他に寄生する植物も多いです。蔓を巻き付けて上ったり、鳥に種を運んでもらって背の高い木の途中から芽を出したりしますね」
 よく見ると熱帯雨林の木々は、一本の木にいろんな形の葉が生えているように見える。
 本物は一種類だけで、あとは全部寄生植物ということだ。レナなどこれ以降、寄生植物を見つける度に「ずるっこさん」と呼ぶようになった。
 「木の実は下に落ちてもすぐに芽を出さないものも多いです。光がないと成長できないのでね。その代わり高い木が倒れたりして光の入るスペースができると一気に伸びます。山火事にならないと芽を出さない硬い種とかもありますよね。あれなんかも同じです」
 えっ、それってもしかして・・・。
 いや、山火事になって焼けないと芽を出さない種があることは昔から知っていた。
 でもその理由が全然判らなかった。そんなに難しい条件を揃える必要がどこにあるのかと。
 「山火事が起きた後は周りの高い木は全て燃えて倒れた後でライバルがいないでしょ。太陽の光を独占できます。おまけに燃えた木は肥料と同じで養分になるし」
 すごい。そういうことだったのか。長年の疑問が氷解。

川沿いのウォーキングトラック


水面の光が綺麗で・・・これはレナの撮影


梢を見上げて・・・これもレナの撮影



 コースの横を川が流れている。
 「この川にも実はカモノハシがいます。カモノハシはあっちこっちに生息しているんですけど、今はちょっと・・・滝の方では泳いでいる人もいましたしね」
 もうちょっと薄暗く静かにならないと出てこないということか。
 梢のあちこちで鳥の鳴き声が聞こえる。
 willieさんはバラムネオナガバトとか、ムナグロシラヒゲドリとか、ハイガシラモズヒタキとか、いろいろと教えてくれた。
 ハイガシラモズヒタキは世界でもこの高原だけにしか生息していないとても珍しい鳥なのだそうだ。
 といっても、教えられてもちらっと飛ぶ姿が見えるとかそのくらいで、とてもカメラに収められるような状態ではない。
 特にこのときはカナとレナが諍いを起こしていてそちらに気を取られていた。みんなで今しかできないことを楽しんでいるときに喧嘩するのはやめようよ。
 原因は双眼鏡だった。
 カナとレナは自分たちの小さな双眼鏡を持っているのだが(親は持っていない)、何年も前に買った物なのでオーストラリア行きの前にレナは紛失してしまったのだ。出発前に探したけど見つからず、仕方なく玩具に毛の生えたようなオペラグラスを二つ持ってきた。ところがそのオペラグラスも今日の荷物をリュックに詰めたときにパパが気づかず部屋に置いてきてしまったので、今は双眼鏡が二人でひとつしかない。
 カナにしてみればこれは自分のものなのだから、自分が使うのが当たり前だと思っている。
 レナはひとつしか無いんだから自分も自由に使えるべきだと思っている。
 willieさんの本格的な双眼鏡もあるのだが、これは子供の手には大きすぎて扱えないようだった。
 仕方なく母はデジカメをひとつレナに持たせた。双眼鏡で見る代わりにこれで好きなだけ写真を撮って良いと言って。
 それでも時々は互いに荷物を交換したくなる。互いに思う瞬間が同じならいいのだが、何故かタイミングがずれているのでまた二人は喧嘩になってしまう。
 ああくだらない。

バラムネオナガバト(だと思う)・・・の、お尻





3-12ネコかトリか、ネコドリ鳴くへ続く


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