19.ワニがファンタスティック
長いナイトツアーも終わりに近づいてきたようだ。
流石に夜のクルーズはきついのか、レナがうとうとし始めた。
膝に顔をうずめて目をつぶっている。
また誰かがクロコダイルを見つけた。
船がマングローブの枝を折りながら接岸する。
さっき何とか野生のクロコダイルを見ることができたし、レナが寝付いてしまったら動かさない方がいいから、今度は見なくてもいいかなと思った。
ところが
「ファンタスティック!!」と誰か女性客が声を上げた。
ファ、ファンタスティック?
ワニがファンタスティック?
どうしても見たくなっちゃったじゃないか。
なにがどうファンタスティックなのか。
レナを抱きかかえたまま船の後部に行くと、これまたさっきのよりは心持ち大きいという程度の小さなワニが、まるで置物のように45度の角度で口を開けていた。