1.小さなヤモリとその絵のこと
八日目 5月5日(木)
レナが朝、目を覚ますと、姉のカナが「面白いものを見せてあげる」と言った。
それはプラスチックのケースに閉じこめられた小さなヤモリだった。
昨夜、クロコダイル・スポッティングのツアーが終わったとき、レナはもうすっかり眠っていたのでそのまま部屋に運ばれた。
カナは起きていて、ママと一緒に天井でうろうろしていたヤモリを捕まえた。
すぐに逃がしてあげても良かったのだが、カナが「レナに見せたい」と言うので朝まで飼っておくことにしたのだった。
「可愛いねぇ」
「絵を描いてから逃がしてあげようよ」
二人はヤモリの絵を描いて、それからケースの蓋をあけてあげた。
小さなヤモリはするするとケースから出て、部屋の隅へ逃げていった。