18.ちびすけワニ、賢明に泳ぐ
ツアーの時間はずいぶん長く感じた。
もう自分たちの船がどの辺を走っているのか全然判らない。
同じ場所を行ったり来たりしているのだろうか。
それともかなり上流に来ているのだろうか。
何度かガイドははっきりとクロコダイルを確認してボートを停めた。
私と子供たち以外の人は何かコツを掴んだらしく、示された場所にすぐクロコダイルを見ることができるようだった。
私と子供たちだけはいつも見つけられなかった。
もう駄目かも・・・と諦めかけたとき、
「!!」
ガイドが見つけて誰かがライトで水面を照らした。
ボートの前方から何かがやってくる。
このボート以外何も動くものがない川面で、何かが泳いでいる。
うねうねと手足を動かして蛇行しながらこちらに近づいてくる。
それは、思わず笑っちゃうほど小さなクロコダイルだった。
手の平サイズ。
ヤモリみたい。
かっわいい。
ボートのすぐ横を必死で泳いでいる。
本当に手を伸ばせばつかめそうなくらい近くだ。
今度こそ私だけでなく子供たちにもはっきりと見えた。
何しろ見つけてと言わんばかりに船のすぐ横にぷかりと浮いているのだ。
一所懸命手足を動かして、真剣に夜の川を泳いでいるのだ。
大サービスというように、ツアーのボートはそのちびすけワニをしつこく追い回した。
ワニは隣に浮いている巨大なものは何だと思ったのか、逃げようともせずちょろちょろと泳いでいる。
右に曲がればボートも右に。左に曲がればボートも左に。
ついにガイドの一人がからかうように、ちびすけのしっぽを摘んだ。
たぶんちびすけは死ぬほど吃驚したのだろう、あっと言う間に飛沫をあげて水中深く潜っていってしまった。
ああ可笑しい。