17.見失う
自分にもライトが渡された。
船はかなりのスピードで夜の川を遡っている。
次々とライトに浮かび上がるマングローブは、いかにもワニが隠れていそうな雰囲気だったが、それらしいものは見つからない。
パパが水面を見るんだと教えてくれた。
自分が見つけたクロコダイルは水中にいたという。
ライトで照らす範囲をを岸から水面に移した。
しばらく水面を見つめていると・・・
「あっ」
初めて動いている何かを目が捕らえた。
外人が描いた下手な毛虫の絵みたいなやつ。
こう、二つの目玉だけぎょろぎょろした・・・。
「見つけた!!」
でも凄く小さかったよ。本当にクロコダイルかな・・・。
それに一瞬で後方へ見えなくなってしまった。
思わず大声をあげてしまったけど、ガイドや他の人が見つけられなかったらどうしよう。
船はいったん停まり、それからバックし始めた。
「どの辺?」と聞かれて、それらしい場所をライトで照らすが、何しろ見つけてから船が停まるまでにわずかでも時間があったので、もう自分が見つけた場所もよく判らない。
目印になるものが何も無いから。
よくまあみんな、こんな状態で、やれあの茂みの下だとか、あっちのくぼみだとか、ガイドに教えることができたなぁ。
私にはとても無理。
でも船を停めてしまったからにはとりあえず、それらしい場所を教えなくては・・・。
説明しようと思えば思うほど混乱してパニックしてしまった。
適当に船は岸に近づく。
岸のマングローブの枝が船と接触して、バキバキと音を立てて折れる。
そんなこともお構いなし。
そして
本当にガイドはクロコダイルを見つけたらしい。
「あそこ」
全員船尾に集まった。
変な話だが、他のみんなにはクロコダイルが見えたのに、発見した当の自分にはついに判らなかった。
みんな熱心に指さして教えてくれるのだが、暗い水面にはうねうねとマングローブの根が伸びているばかりでさっぱりクロコダイルの場所が判らない。とても情けなかった。