16.ムーダリング・ポイント・ワイナリー
ミッションビーチ方面の手前、シルクウッドでハイウェイをクーリマイン・ビーチの方角へ曲がる。
一昨日、ワイナリーの表示を見つけたところだ。
あの後、ミッションビーチにもパラダイス・エステイトというワイナリーがあることを知ったが、この道を通るならまずここに寄ってみよう。
「ところでこの辺って葡萄、取れるの?」
通る道通る道、バナナ、サトウキビ、たまにマンゴーとか植わっているけれど、葡萄なんか見た覚えがない。
葡萄ってもっと涼しくて雨が少ない南向きの丘の斜面とかに植わっているイメージがある。
この辺り、日当たりはいいけどオーストラリア有数の降水率を誇るし気温だって亜熱帯。なんか違うような気がする。
「まさかバナナのワインだったりしてね」
いや、これは冗談ではなかった。
ワイナリーは曲がってすぐだった。
Murdaring Point Winery ムーダリング・ポイント・ワイナリー。
よく刈り込まれた芝生と手入れの行き届いた庭園の中に平屋建てのワイナリーが建っていた。
Openと入り口にあったので恐る恐る入ってみる。
「ハロー」
広々と清潔な室内には綺麗にワインがディスプレイしてある。
奥にカウンターがあり、挨拶を聞きつけて女性が出てきた。
「こちらはどんなワインがあるんですか?」
「テイスティングしてみます?」
女性はグラスを二つ出してから、パパの方を見て「ドライバー?」
パパはそうそうと肯き、妻が味見するからと私を指さした。
ここまで来る日本人はほとんどいないと思うが、パウチで綴じられた日本語の説明書も用意してあった。
マンゴーで作られた「パナマゴールド」はミディアムタイプのみ。こってりとした味わい。
レモンアスペンで作られた「ミスティジェム」はすっきりした中にハーブのような独特の香り。ドライとスイートとある。
パッションフルーツで作られた「ピナクル」は意外に甘い。これもドライとスイートがある。
ダビッドソン・プラムで作られた「レッドエンペラー」は一番葡萄のワインに近い。フルーティな中に少し渋み。これもドライとスイートあり。
私がこれはなかなか美味しいと思ったのは、ライチで作られた「ロマンス」(ドライとスイートあり)と、パイナップル・マンゴー・パッションフルーツで作られた「トロピカルミスティーク」(ドライとスイートあり)だった。
思わず決めかねて二回目も飲んでしまった。
しかし、これだ!!と思ったのは最後のワイン。
マルベリーで作られた「ザ・ポイント・ポート」。
ポートワインなので甘めだが、これは本当に美味しい。思わずパパにもなめさせてしまった。
「うん、これはいい」とパパも納得。
一瓶お買いあげ。
しかし、ここは本当に気前よくテイスティングさせてくれた。
例えばドライかスイートかと聞かれて、どちらを味見させてほしいのか聞いているのだと思い「ドライ」と答えると、ドライから味見させてくれ、次はスイート。
つまり、どっちを飲むかではなく、どっちから飲むか? と聞いているのだったりする。
ほんの一口ずつでも、あまりにいろいろ飲ませてもらったので、すっかりいい気分になってしまった。
「他でもトロピカルワインを飲んだこと、ある?」と聞かれて、パパが「マリーバで」と答えると、
「ああ、
ゴールデン・ドロップね」と彼女はにっこり。
きっとライバルなんだろうな。
テイスティングをさせてもらった部屋の奥にワイナリーの建物がある。
庭から回って中を見学できるようになっている。
覗いてみると、大きなタンクと積み上げられたワインの箱が見えた。
庭には綺麗な蝶も飛んでいる。
ここは本当に整然としたワイナリーだった。