5.ファームの空と風と
シンディが昨夜、もうバギーに乗った?と聞いてきた。
そのとき、パパはディヴィッドに乗せてもらったけど、私はまだなのと答えたことをちゃんと覚えていてくれたらしい。
はしゃいだ子供たちを乗せたバギーが戻ってくると、今度は私を乗せてくれると言う。
「どうせならお子さんたちも見ていてあげるから、二人で乗れば?」
えっ、ええっ?
ディヴィッドが運転するのかと思ったらシンディだった。
シンディの後ろに私が乗り、そのまた後ろにパパが乗った。
このバギーってどこに捕まればいいの?
おたおたしているうちにバギーは発進した。
パパが座席に捕まるんだよと教えてくれたので、とにかく振り落とされないように自分の座っているところをがっしりと掴んだ。こんな程度で本当に大丈夫かな。
バギーは丘をずんずん下っていく。
地面の凹凸がそのままダイレクトに大きな車輪を通じて身体に伝わってくる。
決して平坦な道ではないので、かなり左右に激しく振られる。落ちそうだ。
パパがポンプ室に来たときは、こんなに優しい運転じゃなかったとぼやいた。
いやぁ、これでも十分凄いと思うよ。
「クリークを渡るわよ」
えっ、クリークって?
いきなりバギーは小川に突っ込んだ。
えっ、うそうそ。
シンディはふくらはぎまで水に浸かった状態で運転している。
私とパパは慌てて足を持ち上げた。
なんてワイルドな道。
シンディは小川の流れてくる先を指さして、あそこに泉があるの。そこから水を汲み上げるのよと教えてくれた。
パパが後ろで感心している。
農場で放牧をするには、ただ場所があっても駄目なんだ。動物たちが毎日飲む、水が必須なのだと。