21.この夜を忘れない
本日のメニューはハムと野菜だった。
ハムったって日本のハムサンドに入っているようなぺらぺらのを想像してはいけない。
7、8センチはあろうかという分厚い大きな肉のかたまりで、それが皿一枚に3枚ほど乗っている。とても美味しそうだ。
付け合わせの野菜はインゲン、カボチャ、ニンジン、ジャガイモ。シンプルな味付けだけど野菜の甘みが活きている。
ロッキーがみんなにパンを配ってくれた。
レナはあまり食欲がなくいらない、と返したところ、これが気に入らなかったのかと今度は別のパンを差し出した。彼なりにとても気を遣っているようだ。
セイラはパジャマ姿で時々咳をしている。
咳き込む度にシンディが「駄目よ」と言うように庭の方を指さす。するとセイラは大人しく庭に出て、誰もいない方角に向かって咳をしていた。前に座っている人を不快にさせないよう、きちんと躾けられているのだ。
「セイラはどうしたの?」とパパ。
「風邪を引いているの」とシンディ。
「レナも風邪を引いて、薬を飲んでいるんだよ」
シンディが自分の子供たちのハムを賽の目に切ってあげていた。なるほどねぇ。食べやすく一口サイズにしてあげて、あとは自由にフォークで食べさせるのね。