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ケアンズの南を目指せ **ビーチ&ファームステイ**

20.ディナーの席にカトラリーいくつ?




 また少し雲が増えてきた。
 低いところの雲が茜色に染まっている。
 この辺りでよく見かける鳥が上空でホバリングしている。餌をとっているのかな。羽だけ羽ばたかせてぴたりと空中でストップしているところはお見事。
 6時になったので、母屋の方へ向かった。
 夕暮れの高原が黄昏色に変わってきた。

 パティオの所に行くと、白いテーブルに四人分のナプキンとカトラリーがセットされていた。
 「どうして四つなの?」とカナ。
 「パパとママとカナとレナの分でしょ?」とパパ。
 カナが不思議に思ったのは、座席は六つあるのにテーブルセットは四つしか無かったことらしい。
 しかし、この残る二つの席にもすぐに新たなカトラリーが運ばれることになるとはこのときは思いもしなかった。

 それに何故かパティオの隅にチュークが数羽、うろうろしている。
 そういえば、鶏の囲いの前を通りかかったとき、入り口が開けっ放しだった。このファームの人たちは、逃げてもあまり気にしないのかもしれない。
 しかし子供たちはそうはいかない。
 うろうろしている鶏を見つけると、反射的に追い回す。
 あっと言う間に、また七面鳥の逃げたクリスマスソングみたいになってしまった。 


綺麗な夕暮れの空。あの鳥はいつもぴたりと空中に止まってホバリングしている

またもや鶏脱走・・・
さっきのルックアウトの雲が嘘みたいだ

こんなに景色の良い場所でディナーが食べられるなんて信じられない


 メインテーブルから少し離れたところに、チェックのクロスを掛けたサイドテーブルがあって、ディヴィッドがここにアペリティフを運んでくれた。
 メインディッシュができるまでつまんでいてね、ということらしい。
 スライスしたチーズが二種に、スライスしたソーセージ、それからチーズおかきみたいなチップスと、中央に黒いドーナツ状の物体。ナイフが添えられている。
 黒く見えたのは、回りにぎっしりとクラッシュした黒胡椒がまぶされているからだった。ナイフで切ってみると中は白い。これもチーズのようだ。
 実は私、何よりチーズが苦手だ。
 スライスチーズはたぶん無理だろうなと臭いを嗅いでみて、やっぱり無理そうだったのでレナに食べてもらった。
 この黒いのは大丈夫かもしれない。ひとつ摘んでみる。
 あっ、これは大丈夫。水牛チーズのモツァレラか豆腐みたいに癖がなく、胡椒がよく効いている。
 パパがディヴィッドに「ビールか何かある?」と聞いたら、出せないんだという返答。
 「じゃ、部屋から持ち込んでいい?」
 と、いきなりBYO状態に。
 先ほどアサートンで買ってきたワインを開けて、これとソーセージを食べていることにした。

 そこへロッキーがやってきた。
 興味深そうにテーブルの周りを回っている。
 と、そこへディヴィッドもやってきてロッキーを窘めた。ロッキーが何か言うと、ディヴィッドは駄目だというようにロッキーを家の中へ連れていってしまい、何か言っている声が聞こえた。
 どうもロッキーは駄々をこねて、父親に叱られたようだ。
 うちの娘たちもしょっちゅうどうしようもない駄々をこねるのだが、どこの国でも同じなんだなと思った。ところで原因は何だったんだろう・・・。
 少ししてシンディがやってきて、うちのパパに何か言うと、テーブルにもう二つ、カトラリーをセットした。
 私は知らなかったが、セイラとロッキーもこの席で一緒に夕食をとってもいいかと聞かれたのだった。
 もちろん。喜んで。
 セイラとロッキーはうちの子供たちと一緒に食事したいと言ったのだった。
 意外な展開にびっくり。


アペリティフにチーズの盛り合わせ このブラックペッパーをまぶした白いチーズは、チーズ嫌いの私でも食べられた





3-21.この夜を忘れない


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