19.牛じゃなくて馬が来た
ディナー一時間前になったのでレナを起こすことにした。
あの娘は特に寝起きの機嫌が悪いので、起こしてすぐディナーという事態だけは避けたい。
よほど眠いのか、起こしても起こしても起きない。
しかも眠くて寝ぼけたままぐずぐず言っている。
血糖値を上げれば目を覚ますかと思い、カナがなめていたチュッパチャップスをレナにも一本持たせた。
寝ぼけ眼で棒つきキャンディーをなめ始めたレナは、なんと目を覚ますどころか飴を口に突っ込んだまままた寝てしまった。
おいおい、虫歯になっちゃうよ。
レナの目を覚ましたのは飴ではなかった。
「窓の外に馬が居る」とパパ。
カナが裏口から外へとんでいった。
このコテージの裏には簡単な鉄条網の柵がついている。
その向こうは放牧地だ。
牛でも近づいてこないかな・・・と昨日から思っていたのだが、牛たちはみんな遠くにいるらしく、今まで何も来なかった。
それが牛ではなく馬が来た。
茶色の馬二頭だ。向こうもこちらが気になるのか、ちらちらと目線を送りながらどんどん近づいてきた。
「レナ、おいでよ」と姉が呼んだ。
レナも転がりそうになりながら走り出る。
「馬だ、馬だぁ」
二人に柵ぎりぎりのところでポーズを取ってもらう。
「お馬さんと一緒に撮影してあげるからね」
二人が気取ってポーズをとっていると・・・
「うわぁ」
気づかぬうち、すぐ後ろに来た一頭が、鼻先を二人の顔の側に出して、吃驚仰天。