15.山盛りランブータン
子供たちがひとしきり食べ終えた後だった。
ロラリーが娘を伴って戻ってきた。
手にはスーパーでくれるような大きなビニールの袋を下げている。
「これ、もらってちょうだい」
袋の中から出てきたのは、赤くて丸くてひげもじゃの、見たこともないフルーツだった。
「○×△」
「えっ?」
「ライチ」(と、聞こえた)
でも私の知っているライチと全然見てくれが違う。
「・・・ランブータン?」
「?」
「・・・ドラゴンフルーツ?」
「?」
とりあえず自分が見たことのないトロピカルフルーツの名前を挙げてみるが、やはりロラリーの発音はライチと聞こえる。
「こうやって食べるのよ」と、ロラリーは言うと、娘を振り返り肘でこづいた。
シャイなロラリーの9歳の娘は、一瞬どうしようか逡巡したが、次の瞬間意を決したように大きな口を開けて謎のフルーツに噛み付き、噛み切った。
中からは白い果肉が出てきた。
ロラリーの娘は、母の言いつけだから囓って見せたけど、本当はすごく恥ずかしかったんだからという顔をして後ろに下がってしまった。
真似して囓ってみた。
外側は渋いが、白い果肉はとても甘く、確かにライチとしか思えない味だった。
「どうもありがとう。本当にこんなにもらっていいの?」
「これ、日本でも手に入る?」とロラリー。
「(ライチなら)冷凍物はあるけど、フレッシュなものは滅多に食べられない。こんなに美味しいのは初めてよ」
「そう、良かった。この辺りではこれと、バナナとパイナップルとメロンが採れるのよ」
ロラリー親子が立ち去った後、袋の中から全部出してお皿に盛ってみた。
大きな皿に一山ある。
嬉しいなぁ。なんて贅沢な気分。
ちなみに日本に帰ってから調べたら、この謎のフルーツはやっぱりライチではなくランブータンだった。