1.早起き娘たち
七日目 7月20日(火)
レナの泣き声が聞こえて飛び起きた。
時計を見たら4時だった。
4歳のレナは未だに時々夜泣きする。
夜泣きなんて言うのは1歳未満の赤ちゃんがするものと思っていたが、特に興奮した日の夜と翌日の夜は彼女はよく泣く。寝ぼけて大泣き。寝静まっている時間にこれをやられると親は辛い。
彼女は誰より傍若無人なのに、実は一番神経が繊細だ。
自家中毒症もあって、興奮しすぎると翌日すぐに吐く。
リッジスのヴィラは二階建てで、一階にリビングやキッチンとシャワールーム、二階にバスルームと寝室が二つある。寝室はツーベッドルームとダブルベッドルームで、到着早々ツーベッドルームは子供たちに取られた。ここは子供部屋と言われ、鍵までかけられてしまった。
昨夜、クルーズでたっぷり遊んだレナは、帰宅前に寝付いてしまった。
そのまま起きなかったので、子供部屋になったツーベッドルームのベッドに運んだ。
寝るのが早かったから夜明け前にお腹が空いて目覚めたのかと思ったが、単なる夜泣きで、よしよしと背中を叩いてやるとまた寝付いてしまった。
心配なのでそのまま私もレナのベッドで一緒に寝た。
次にカナが起きた。
今度は5時だった。
まだ早すぎだってば。一時間前にレナに起こされた私はまだ眠い。
カナは寝ぼけたわけではなく本当に目が覚めたみたいで、隣のレナのベッドで寝ている母が起きる気配がないと知ると、一人で階下に降りていった。
階下では既にパパが起きていた。
彼も4時にレナの声で目が覚め、そのまま眠らなかったという。
カナの声が聞こえるとレナも目を覚ました。
今もうベッドにしがみついているのは私だけだ。
パパはいつものように、夜明け前の散歩に行くことにしていた。
今日はカナも行く?
行くよ。
いつも一人で気楽に出るところ、カナの準備で手間取った。
ママ、カナの着替えはどこ?とパパが階下から声を張り上げて聞く。
うー、もうちょっと寝かせてよ。子供部屋の棚の上。
パパはカナを着替えさせて、寒いのでウィンドブレーカーも着せて、さらに砂場道具のバケツも持たせる。
これで準備完了、と思ったら。
待って、レナも、レナも行く。
レナの長袖はー?
うー、昨日のビーチバッグの中かな。
だからお願いもうちょっと寝かせてよ。
ようやく子供たちの準備も全て整って、三人でドアを開けた。
「じゃ、ママ、ビーチまで行って来るね」
待て待てーっ。
寝ようと思ったのにここまで起こされては。
私も一緒に行くってば。
あと3分待って。
「来なくていいよー」と冷たく言うパパには後でパンチ。