12.海鳥と珊瑚礁の島
しばらく波打ち際で遊んだ後、パパが言った。
「シュノーケル、してくれば?」
「えっ、だって・・・」
実はクルーズ船からサイズの合うシュノーケルを1セット持ってきてはいたが、実際にやるつもりはあまりなかった。
というのは、ひとつは水温がかなり低かったためで、もうひとつは去年の
ロウアイルズで子供たちが泣いたからだ。
私は寒いのが苦手だ。
増して冷たい水の中に入るのは嫌いだ。
ホテルのプールなんて泳ぐ人の気が知れないと思うくらいだ。
ここの海水温は冷たいとまではいかなくても、足を入れると冷やりとする。ちょっと全身浸かる気にはなれない。
去年の
ロウアイルズではもう少し水温が高かったのだが、フィンをつけて砂浜から海の方へ降りようとすると、カナもレナもわんわんと泣いてとりつき、怖いから海の中へ行かないでと叫き立てていた。
母親が海の中に入ったら、もう帰ってこないと思ったのだろうか。
膝下ぐらいの深さでも、ソフトコーラルがうようよとあるような海だったので、シュノーケルをとても楽しみにしていたのに、まったくできなかった。
そんなこともあって、今年は最初から期待もしていなかったのだ。
それでもシュノーケルセットを借りてきたのは、どんなときでも「もしかしたら」と思う私の性格のためだ。
「やらないよ」
「いいの?」
「最初からやらないつもりだったもの」
「後悔するよ。シュノーケルもレンタルした、水中撮影カメラもある。ライフジャケットも貸してくれる、ぜーったい後悔するって」
「・・・」
そこまで言うか。
そういう自分は?
「シュノーケルセット、レンタルしてないもん」
「・・・」