ポートダグラス楽園日誌2004 6-12


12.海鳥と珊瑚礁の島

 しばらく波打ち際で遊んだ後、パパが言った。
「シュノーケル、してくれば?」
「えっ、だって・・・」

 実はクルーズ船からサイズの合うシュノーケルを1セット持ってきてはいたが、実際にやるつもりはあまりなかった。
 というのは、ひとつは水温がかなり低かったためで、もうひとつは去年のロウアイルズで子供たちが泣いたからだ。

 私は寒いのが苦手だ。
 増して冷たい水の中に入るのは嫌いだ。
 ホテルのプールなんて泳ぐ人の気が知れないと思うくらいだ。
 ここの海水温は冷たいとまではいかなくても、足を入れると冷やりとする。ちょっと全身浸かる気にはなれない。

 去年のロウアイルズではもう少し水温が高かったのだが、フィンをつけて砂浜から海の方へ降りようとすると、カナもレナもわんわんと泣いてとりつき、怖いから海の中へ行かないでと叫き立てていた。
 母親が海の中に入ったら、もう帰ってこないと思ったのだろうか。
 膝下ぐらいの深さでも、ソフトコーラルがうようよとあるような海だったので、シュノーケルをとても楽しみにしていたのに、まったくできなかった。

 そんなこともあって、今年は最初から期待もしていなかったのだ。
 それでもシュノーケルセットを借りてきたのは、どんなときでも「もしかしたら」と思う私の性格のためだ。

「やらないよ」
「いいの?」
「最初からやらないつもりだったもの」
「後悔するよ。シュノーケルもレンタルした、水中撮影カメラもある。ライフジャケットも貸してくれる、ぜーったい後悔するって」
「・・・」
 そこまで言うか。
 そういう自分は?
「シュノーケルセット、レンタルしてないもん」
「・・・」




 ばしゃばしゃと腰まで海に入ってみる。
 ひゃぁ、つっめたぁい。
 くるりと岸を振り返る。
「冷たいってば」
 しかしパパは海より冷たく、さっさと行けと手の甲をひらひらさせてみせる。
 うーっ。
 さらに水深は深く、胸元まで水に浸かる。
 ぐぐぐぐ。拳を握りしめ、冷たさに耐える。
 えーい、せっかくはるばるグレートバリアリーフまで来たんだ。
 海が冷たいぐらいなんのその。
 ああ、でも本当に入るなら私もウェットスーツ借りるんだった・・・。
 後悔と躊躇い。
 もうここまで来たら、どぶんと入るしかない。
 顔をつける瞬間、子供たちの「行かないで!!」と言う叫び声が聞こえた。
 もう遅いよ。






6-13.子連れシュノーケルへ続く


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