ポートダグラス楽園日誌2004 5-14


14.リトル・ワンが出た!!

 さっきも通った十字路に戻ってきた。支流との分岐にはワニ注意の看板があって、赤い三角ラインの中にに口を開けたワニの絵が、赤丸に斜線の禁止マークに泳いでいる人の絵が描かれたアイコンがついている。
 ここら辺がクロコダイルスポットなのだろうか。
 ばららっばららっと魚の餌が撒かれた。
 うようよっと魚が寄ってきて食べ始めた。海の魚と違って、地味な色の魚たちだ。

 次にいきなりひゅっと例の中骨が投げられた。
 すわ、クロコダイルか?と思えば、それが川岸に落ちるか落ちないかのうちに、さあっと何かが視界を横切り、空中から鮮やかにかっさらっていった。
 あまりに見事なキャッチぶりに、カメラを構える暇も無かった。

 中骨は三つ。
 あと二つ残っている。
 船の乗客全員がおのおのカメラやビデオを構え固唾をのんだ。
 第二投が投げられた。
 来るか!!

 シーン・・・。

 パパがぼそりと言った。
「不発だな」
 ずるっ。

 三投目も不発に終わり、誰も取りに来なかった中骨を岸に残し、船は再び動き出した。
 クロコダイルじゃなかったし、二発失敗で終わっちゃったよ。
 あきらめてカメラを下げようとしたら、運転手兼ガイドの旦那が無言で木の上を指さした。
 梢には最初の中骨を鮮やかにさらった海鷲が、悟りすました顔で遠くを見ていた。


どこまでもマングローブの続くクリーク、これもポートダグラスのもう一つの貌

餌を撒くと、なにやら大きな魚が寄ってきた

中骨を鮮やかにかっさらったのは、この海鷲だった


 ところで蒸気船には小さいながら、ちゃんとトイレもついている。
 まあ、トイレ無しでランチクルーズとかは無理だろう。
 急にトイレに行きたくなった私の脳裏にちらっと、その僅かの間にクロコダイルが出たらどうしよう・・・という不安がよぎった。
 でもこれだけ待っても出ないんだし、今日はもう駄目かもしれない、と諦めてトイレに入れば、急に騒がしくなる船内。

 出たーーーーー!!!
 クロコダイルかーっ。

 急いで飛び出すと、全員右舷に集まって岸を指して騒いでいる。
 どこどこどこーーー??
 焦りまくってぶんぶんと水面を見回す私に、パパがほら、あれだよと教えてくれる。

 だから、どこー?
 「リトル・ワン」と、見つけたガイドが指を指すが、気ばかり焦る私にはまったく見つけられない。
 「あれだよ、ほら、マングローブの根元」とパパ。
 だって岸は全てマングローブなんだよ。だからどの根元だってば。
 「判らないやつだな」
 「だから判らないって言ってるじゃない。あの辺りにごく小さな入り江があるじゃない。あそこから数えて何番目の根元?」
 「えーと、二つぐらい」
 い、いたーっ。
 本当に小さい。マングローブの幹の方が太いくらいだ。
 保護色だし形も枝みたいだから、言われなくては判らない。これでは一般の人が先に見つけるのなんてとても無理だ。毎日三回ワニ探しのクルーズをしている専門家だからこそ見つけられるんだな。

 見られたクロコダイルはリトル・ワンだったけど、そんなちびすけでも見つけることができて良かった。
 だってさ、一応本物の野生のクロコダイルなんだし。






5-15.ディクソン湾の夕暮れへ続く


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