5.バルーン・フライト
ぐんぐんと高度はあがり、眼下に赤い大地と乾いたユーカリ林、農場に湿原、さらに遠くの山々と雲の間からのぞく朝の日差しが見えた。
湿地帯から鳥たちが群れなして飛び立つ。
頭上は青空、東には雲。
雲の切れ目から光のシャワーのように細い陽光が大地に降り注ぎ、地上に残っていた白い靄をゆっくりと消していく。
隣に乗っていた奥さんが、「野生のカンガルーが見えるって聞いたけど」と言った。
残念だけど今日はカンガルーは見えないらしい。
だけど
マリーバのゴルフ場に行けば、うじゃうじゃと野生カンガルーがいるのだから、日によっては草原をジャンプしている姿が見えるのだろう。
30分というフライト時間は十分すぎるほどだった。
飛行機に乗っているのとは違って、生身のままガラス越しでもなく空を飛ぶというのは不思議な体験だった。