子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★★ 湯温はぬるめ、泉質も問題なし
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★☆☆ 子連れでも気軽に受け入れてもらえる施設
子連れ家族のための温泉ポイント
緑の濃い夏の景色を見ながら、葛折の道を行く。
途中、常葉川に沿って蛍が乱舞すると看板に書かれていた。
下部温泉は武田信玄の隠し湯。道の両側に細長く温泉街が伸びている。
橋を渡って踏切を渡って、以前入ったことのある下部温泉会館を右手に見ながら少し細くなった道をさらに先へ。
ああ、確かに見覚えがある。ペンションなんかにありがちな勘違い風の水色に塗られた外壁。でも建物は外壁の色と釣り合っていない鉄筋コンクリートで古びている。
かがみゆ。
そう、そんな名前だった。
実は子どもたちが生まれる前に何度も本栖湖を訪ねて、下部温泉郷にも二度ほど足を運んだことがある。
最初に立ち寄った下部温泉会館はあまりお気に召さず、二度目がここ、かがみゆだった。
道から見えるところに日帰り入浴を歓迎する電光掲示板を置いているので判りやすい。
確か水のようにぬるい湯で、宿の主はこのぬるい湯にじっくり時間をかけて入ると良いと教えてくれたはず。
あれは何年前だったろうか。
再訪したのは2004年の夏。
ロビーにはいきなり男女別の大きな暖簾を下げた浴室の入り口があって、ここは本当に旅館なのか?と思う感じだった。まるで日帰り専門の施設のようだ。
先客は二名ほど。
子供たちを洗っていると、浴槽の縁を越えてさらさらさらさらと溢れるお湯。
すわ掛け流しかと思えば、残念、底からは強力に吸引。
外観からすると浴室はかなり綺麗で明るく、内湯にはぬる湯の浴槽と加熱適温の浴槽の二つ、繋がった窓の外には下部温泉で初めてという露天風呂があり、ここも適温。
三つとも底から吸引しているが、特にぬる湯の浴槽は湯船から捨てられるお湯の量も多く、半掛け流しという感じだ。
どうしてもカルキ臭がするが、まあここまでなら許せるかなという感じ。
そうは言っても、千円(当時の料金設定)は少し高いと思う。
前に入ったときは、ぬる湯の浴槽がとにかく冷たくてとても入れなかった記憶がある。でも今日はとても気持ちいい。暑い日だからか、お湯の温度があのときより高いのか。
体温より少し低いくらい。プールのように冷たくはない。
内湯の二つの浴槽のうち、ぬるい方は圧注浴のノズルが、熱い方は底からジャグジーのぼこぼこが出ている。
露天風呂はそれほど大きい物ではないが、身を乗り出せば川まで見える。
お湯は無色透明でときどきごく細かい粉のような湯の花。
湯中で肌をこすると、きしきしを通り越してぎしぎしいいそうな引っかかり具合。
どの浴槽でも結構肌に泡がつく。
先客はすぐあがってしまい、ぬる湯好きの子供たちはなかなか出る気配なし。
浴室の一角に「飲めます」の蛇口有り。女湯のそれはよく公園や冷水サーバにある直接水が吹き上がるタイプだったが、後で写真を見たら男湯は何故か鶴の形の筒から普通の蛇口が出ていてコップで飲むようになっていた。
味は特にしないが、特徴的なのは舌触り。
ぎとぎとラーメンを食べた後みたいなこってりとぬるつくテクスチャー。
入浴中のぎしぎしとした肌触りと相容れない感じでちょっと不思議。
下部温泉には他にも大市館や古湯坊源泉舘といった日帰りを受け入れてくれる旅館があるが、子連れお断りの大市館や湯治場として機能している古湯坊源泉舘などと比べて、子ども連れにはこのかがみゆが気楽でよいかもしれない。
帰りがけに宿の主人は子どもたちにキャンディーを渡して玄関まで見送ってくれた。
「6月なら蛍がいっぱい飛んでいるんだよ、また来年もおいでね」
湯上がりは体が中から温まっているのに清涼感のあるさわやかさで、とても気持ちよい。
夏に最高の温泉の一つかもしれない。