子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★☆☆ 温度は適温
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★★☆ ベビーベッドもベンチもない、混浴も他の人がいると協力は難しそう
子連れ家族のための温泉ポイント
雨の中にその宿は建っていた。思わず息を呑む。すごすぎる。これで現役の旅館なんて。
もともとGWに鳴子温泉郷に来て、鳴子の湯めぐりチケットを購入したら県境を越えた山形県の瀬見温泉や赤倉温泉でも使えることを知った。それでなんの前知識も無いまま瀬見温泉の喜至楼まで来て、そして立ち尽くしたわけだ。
なお、古い建物や古い浴室はめちゃめちゃ好きなので、今回は写真多め。できるだけここに残したい。
そして立ち尽くした理由は建物の見事さだけではない。ドアを開けて玄関に立って呼べど叫べど誰も出てこなかったから。
この時は10時半で、湯めぐりチケット用のリストには日帰り入浴は10時から14時半とプリントされていたが、日帰り入浴を受け付けているという本館には「日帰り入浴10時~15時まで(受け付け終了14時半)」と「本日の日帰り入浴は終了いたしました」の札が両方出ている。どっちなんじゃい!
でもガランと静まりかえっていて誰もいないし、呼んでも誰も出てこないし、これは今日がGWであることを鑑みると、ふだんは受け付けていても今日は特例でお休みってこともありそう。それで一度は諦めたんだ。
それで建物全体をカメラのフレームに収めようと向かいの共同浴場 せみの湯の軒下までバックしたら、よそのお客さんと雑談になって、あの宿に入ってみたいけど今日は日帰りやってないみたいだって言ったら、「いやいや自分たちはさっきそこに入ってきたばかりだから」「別館の方まで行けば誰かいるから」と。
えっ、入れるの!?
それでもう一度本館から入って迷宮のような館内をせっせと歩いて別館まで行ったら宿の人がいた。日帰りできるか聞いたら、ちょうど宿泊のお客さんも入っていないようだから今なら大丈夫と。
やった!聞いてみるものだ。教えてもらわなかったら絶対に入れなかった。
喜至楼は外観だけじゃなくて館内も時間が止まったよう。昔の面影を残しつつ、明日にはもう崩れて廃業しちゃうんじゃないかという不安があるほどに、ぎりぎりのところで美しい。壁のタイルなど、今はもう直せないという。そうだろうねぇ。
お風呂は「ローマ式千人風呂」「あたたまり湯」があるよう。さらに「ふかし湯」を見かけた。館内表示によると「岩風呂」「滝湯」もあると思われる。
「ローマ式千人風呂」は入ってみたかったが混浴で、入ろうとする私の前にもう一人来た男性がさっさと入っていってしまったので、女湯の「あたたまり湯」に先に行くことにした。使っている源泉は全て共通で掛け流しにしているとのこと。
あたたまり湯は楕円形のタイル張りのお風呂で、レトロでいい雰囲気。お湯は紺色に少し深緑を混ぜた鈍く淡い濁り湯。赤さび色のそこそこ大きな湯の花がある。温度は適温で、すべすべする感触が強い。この肌触り、好きだなぁ。
においはあるが何とも例えきれず。蛇口の白い析出物が成長している。四角い窓の上にレトロな丸窓が二つ並んでいるのも何だか可愛らしい。
そろそろ混浴の方も空いたかと思って様子を見に行ったが、向こうさまは全然上がる気配がない。でもどうしてもあの仙人風呂にも入ってみたかったので、意を決して入ってきた。上がり掛けていた夫がもう一度一緒に入ってくれてよかった。
それにしても返す返すも立派な建物なのだ。これは失われてしまう前に絶対に入りに行った方がいい。もちろん失われないのが一番だけど、あとどれだけ現役として保つのかも心配だ。