子連れ家族のための温泉ポイント
- 湯温★★☆☆☆ 泉質★★★★☆ 湯温は温泉浴槽はかなり熱いがそれ以外は少し熱め程度
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 脱衣所におむつ換え用の台あり
子連れ家族のための温泉ポイント
昭和への郷愁を誘う鎌田行進曲のメロディーが発車の合図として流れるJR京浜東北線 蒲田駅。西口を出ると、じりじりと梅雨の合間の強い日差しが照りつけてきた。
駅前には大きなアーケードの商店街が口を開けて行き交う人々を呑みこんでいる。
アーケードを抜けて左に病院が見えたら右へ折れ、ひたすら直進。小学校を過ぎてから変形交差点を斜め左前方へ。
住宅街の中に溶け込むように大田黒湯温泉はあった。
もっと古めかしい佇まいを想像していたら、意外に真新しい外装だった。
大田区には温泉銭湯が多い。
この辺りの比較的浅い地下水をくみ上げると、薄いコーヒーのようなコーラのような透明感のある黒い湯が出てくる。
ここもその例にもれず、黒湯であることを温泉名にも掲げている。
銭湯名に第二日の出湯とあるが、元々上野浅草に日の出湯の第一があるとのことで、第二日の出湯と名付けられた。
銭湯では営業時間前から常連さんが一人二人と集まってくるところが多いが、ここは時間ぎりぎりになってもたまたまなのか誰の姿も見えなかった。
なまじ住宅街の真ん中なので、一人で突っ立って待っているのも気が引ける。
直射日光を避けようとわずかな日影に身を寄せていたら、にゃーにゃーと甲高い声で啼きながらやけに人懐こい三毛猫が近づいてきた。しょうがなく相手をしていると、際限なく足にすり寄ってくる。
猫と戯れていたら3時はあっという間だった。
温泉銭湯が開くと同時に道向かいの小料理屋も暖簾を下げ、それを見るや否や三毛猫は私に興味を失い小料理屋の店先に消えていった。
前日に同じく東京の温泉銭湯 渋谷笹塚温泉を訪ねたばかりだったのでどうしても比較してしまうが、
まず第二日の出湯は天井の高さに驚かされた。
脱衣所の天井が高く広々として、その天井自体も立派である。
さらに脱衣所と浴室はガラスで仕切られていて、その視覚効果で浴室もとても開放感のあるスペースとなっている。
何より正面の雄大な富士の絵。いかにも銭湯らしい。
しかもこの富士の絵は隣の男湯と天井で繋がっている部分の壁を利用して描かれているため、これまた浴室がとても広く感じられる一因となっている。
浴槽は三つあり、一番左に黒い湯が張られている。
手を差し込んでみるとびっくりするほど熱かった。
身を沈めるのに勇気のいる温度だ。
実際他の利用客もみんな手を入れて温度を見ては次々違う浴槽に移動してしまう。
思わず辺りを見回して、そっと浴槽の右隅についている蛇口をひねった。
と、驚いたことにそこから勢いよく出てきたのは水道水ではなく、やはり冷たい黒い温泉だった。
何だこれなら薄まらないぞ、と気を良くし、じゃばじゃばと投水する。
壁側からは絶え間なく熱い湯が注がれているのだから、水を止めればまたすぐに浴槽の温度は上がるだろう。
ようやく蛇口の傍だけ少し温度が下がったところで入浴してみた。
もちろん蛇口の温泉水は既に止めてある。
黒い湯はすべすべさらさらとしていた。
すべすべであっても、にゅるにゅるではない。乾いた後の肌はパウダリーな感触だ。
植物を発酵させたような甘い臭いもする。
たぶんこんな感じのお湯だろうなぁと想像していた通りのお湯で、それ以上のお湯だった。
上がった後になって、そういえばここって露天風呂があったような! と思い、番台で聞いてみると、なんと月の前半は女湯で、月の後半は男湯が露天風呂付きになると教えてくれた。
今日は月の後半・・・露天風呂に入るためにはもう一度日を改めて足を運ばねばならないらしい。
帰路について風を受けると、あんなに熱かったのにすっかり汗も引いていることに気付いた。
やはりさっぱりとした重曹泉だったからなのか、べたべたとした感触が無いのは夏に嬉しい。
足取りも軽く小学校の横を通ると、閑散とした校庭に下校のメロディーが流れ始めた。