子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ 濁り湯で深さがわからないので注意
- 設備----- 雰囲気★★☆☆☆ おむつ着用児は入浴不可
子連れ家族のための温泉ポイント
取材で三島スカイウォークに行った帰りに寄った。なんとなく時間があったので、googleマップを拡大して探していたら、三島駅からバスで行かれそうな所に温泉を発見した。
停留所でバスを降りると、夏の長い日が少し傾きかけた田舎道。バスはエンジンの音を立てて坂道を上がって行ってしまい、あたりにはもう誰の姿もない。
竹倉温泉は昭和初期から中期にかけて湯治場として複数の宿が営業を始めたようだが、1軒また1軒と廃業や休業に入り、もう現在はみなくち荘だけとなってしまった。そのみなくち荘も日帰り営業のみ。
玄関前に停まる軽トラには紅葉マーク。庭からは男の子たちの声とボールの弾む音。草いきれ。虫の声。
入口のガラスに「休業」の文字が見えて一瞬焦ったが、よく見ると「明日休業」という張り紙だった。休業日の前日に張り出されるらしい。毎日来る常連さんなどが間違えないようにという配慮だろうか。
レトロなロビーは昭和時代の日本の田舎をそのまま再現したような雰囲気。椅子で新聞を読んでいたおじさんが、私の姿を見てフロントに立ち、受付をしてくれた。
浴室は壁の洒落たモザイクタイルがなんとも言えない味わい。楕円の浴槽の奥に窓。窓の外は青々とした田んぼに向日葵の花。
お湯は鉄分を含んだ赤湯で、まったく底の見えないオレンジ色の濁り湯。しっとりとしたきしつかない肌触り。古びてにおいも枯れかけたような金属臭。ほんのりと甘く、川のにおいも。
楕円の端は半分浅くなっていて寝湯にちょうどいい。男湯と女湯の境は最初、板かと思ったが、近づいてみたらほぼ透けない磨りガラスだった。
ふいに男湯の方から声がしたと思ったら、浴槽の3ヵ所から勢いよく圧注浴が出てきた。これってこんな風になっていたんだ、知らなかった。
後から入ってきた常連さんに聞くと、いつもは宿の人が圧注浴のスイッチを入れておくのだが、今日は入っていなかったから自分たちで入れたとのこと。
脱衣所にドライヤーがあったので髪の毛を気まぐれで洗ったら、もう全然汗が引かなくなってしまった。やたらと温まる温泉のせいなのか、今日が暑すぎるのか。
とにかく郷愁を誘う温泉。ここはレトロで静かな時間が流れるところ。
2023年に取材で再訪。ご主人と女将には大変お世話になった。地元の人だけでなく、東京など遠方からもこのお湯を気に入って来てくれる人が多いそう。もう宿泊は営業されないのですか?と伺うと、老夫婦二人でやっているので日帰りのみ、それもいつまでできるかわからないねと寂しそうに仰った。
私は女将手作りの帽子を愛用しています。ありがとうございます。