子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★☆☆☆ 泉質★★☆☆☆ 濁り湯で深さが判らない
- 設備★☆☆☆☆ 雰囲気★★☆☆☆ 面白いけどあまり子供向けとは思わない
子連れ家族のための温泉ポイント
そこは紺屋地獄という地獄だった。別府温泉郷には地獄めぐりできるいろいろな地獄があるが、こんなところにも地獄があった。
明礬温泉エリアを離れる前に、最後に寄る日帰り温泉を「別府温泉保養ランド」と「明礬湯の里」で迷って、私はここ「別府温泉保養ランド」の方を選んだ。だって明礬湯の里は混雑していそうだったし、景色も良いと言うなら今日みたいなどんよりした日じゃなくて、もっとスカッとした日に入りたいじゃない?
小綺麗な明礬湯の里に未練があったらしい夫は釈然としない風だったが、二人して別府温泉保養ランドの前に立ち、この判断が正しかったのかどうか逡巡することになった。
なんかこう、外観、入口からしてえらくB級感。温泉はちゃんとしてるんだろうけど、雰囲気は怪しいとしか言いようがない。なんだよこの、カタカナで「ランド」と書かれたスリッパは。
浴室に至る回廊を行くと、轟々と音を立てて蒸気が吹き上がっていた。これが紺屋地獄。この別府保養ランドは鉱泥を使った泥湯が有名なのだが、この紺屋地獄の紺屋鉱泥がその源となっている。
さて、別府保養ランドには沢山のお風呂がある。内湯は男女別だが、露天は全て混浴だ。浴室入口に風呂場の図解があったが、浴室内に貼られているわけではないので、正直、服を脱いだ後はもうどこがなにやら。それぐらい迷路じみている、ここは。
脱衣所から出ると、まず正面に「コロイド湯」。大きな四角い濁り湯の浴槽だ。灰色の濃い濁りだが、まあほかのお風呂に比べれば普通だ。普通というか、まとも。
それから脱衣所の横の狭い通路を進んでいくと、泥湯(地下鉱泥浴場)がある。たぶんここが主力だ。
泥湯は木のバーで仕切られていて、そのバーを握って入るようになっている。足を踏み入れるとにちゃっ、ぬちゃっと足下から泥が絡みつく。これがもうねぇ、歯の根が浮くような、なんともむずがゆい奇妙な感触。思い出しただけで歯がむずむずする。同じ別府の泥湯でも鉱泥温泉のサラサラと清潔な泥とは違って、地下のアングラな雰囲気と相まって『パノラマ島奇譚』とか『ドグラ・マグラ』とかわけのわからないものを思い出した。
泥湯の先にはさらに混浴露天風呂に至る通路がある。えっ、本当にこれでいいの?と思うルートだ。一応地下泥湯浴場以外も全て泥が溶け込んでいる濁り湯なので、露天風呂は混浴でもうまいこと身を隠しながら外に出ることはできる。しかしこの露天風呂も迷路のようにバーでエリアが仕切られていたりして、しかもバーだけなので目隠しにもなりゃせず、なんでこんな作りに?と謎に思う。
このほかに、滝湯と蒸し湯と自律神経の湯なる浴槽があるらしく、私はしばらくうろうろとあっちに行ったりこっちに来たり。
ようやく蒸し湯の場所は発見する。コロイド湯のところから泥湯に行かずにいったん外に出るのだった。外に何故か服を着たどこぞのおやじがうろうろしていてやり過ごす。なんなんだ。
蒸し湯自体は他の源泉と成分は同じだが湧いている筋が違うとかでぬるいお風呂も。これを熱いのと交互に入ると気持ちよい。常連さんに冬は寒いんだけどねと教わる。
さらにうろうろした末にやっと自律神経の湯も見つかる。なんとさっきの混浴露天風呂のさらに奥に位置する露天風呂がそれだった。
しかしここに行くためのルートが難易度高すぎる。泥湯はバスタオルを巻いては入れないので、混浴露天風呂の中を移動して自律神経の湯に行くわけにはいかない。いくらなんでもその浴槽からむきだしで上がれないからだ。
するとバスタオルを巻いて、混浴露天風呂の周りをぐるっと歩き、自律神経の湯に到達するしかない。しかしこれ、見世物状態だし、足下の小石が痛くて痛くて。
自律神経の湯は露天風呂だが、入口に暖簾が下がっていて、中も完全な仕切りがあり、とりあえず暖簾の中まで移動すればバスタオルが外せる。
ホッとしたのもつかの間、なんなんだこの自律神経の湯。さっきのアングラ泥湯みたいに足下がぬちゃぬちゃの泥に埋まる上に、枯れ葉なんかも積もっていて、ほぼ野湯かよという。
全般的なお湯に関する感想は、マッチのにおいもあるがとにかく酸っぱいにおい。肌はすべすべというよりしわしわで、お湯以上に入浴した肌から酸っぱいにおいが漂う。湯上がりの肌は薄く何かにコーティングされたよう。
でもってこんなに苦労したにも関わらず、最後まで滝湯は発見できなかった。なんでじゃ。