子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★☆ トゲトゲした所があるので注意
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★★☆ 脱衣所にベビーベッドはない
子連れ家族のための温泉ポイント
2022年の奈良県さんは東京都に優しかった。他の都道府県が東京都をガン無視して周辺の神奈川県だの埼玉県だのを優遇したのに対し、奈良県さんは都民にも割引を提示してくれた。
それで急遽奈良県旅行を企てたのだが、「奈良県行くなら入之波(しおのは)温泉に泊まりたい」という私に対し、夫曰く「入之波温泉の一軒宿、山鳩湯はキャンペーン対象外だよ」と。
そ、それはッ…
でも行く!私は入之波温泉 山鳩湯に行きたいんだ!ということで、5泊の奈良県旅行のうち1泊はキャンペーン割引が効かない山鳩湯に泊まることにした。最初は釈然としないふうの夫だったが、実際に山鳩湯に泊まったら掌を返してくれた。「こりゃあ凄い!来た甲斐があった」って。
もともと入之波温泉は平安時代開湯の歴史を持ち、遠い昔はもっと宿も多かったようなのだが、昭和48年に完成した大迫ダムに全て沈んでしまった。山鳩湯が新たにボーリングして自噴する源泉を掘り当て、現在に至る。
宿は吉野川のダム湖のほとりにあり、駐車場から階段を下りていく。館内に入ってから浴室まではさらに階段を下りていく。
最初に驚くのは、どこまでが浴槽本体なのか、どこまでが析出物なのか、まるでわからないゴールドベージュの浴槽。カルシウム成分がサンゴのように固まり、触れるともろくポロリと取れる部分もある。まるで柔らかい鍾乳石のよう。
お湯もまた析出物と同じゴールドベージュ。表面にカルシウムの粉が浮いてマーブル柄の文様を形作っている。これは朝風呂に来た時にはほぼ膜になっていた。シャリシャリと崩して入るのがもったいないほど。
お湯はぬるいが入る時は温かく感じる。実際の温度は夕方時点で内湯39.1度、露天38度だった。朝には内湯が36.6度とさらに体温程度まで下がっていた。
入って最初にふわっと何かに包まれる。炭酸のアワアワな感じはしないが、それでも少し湯口近くでは泡が肌に付くのがわかる。最初にふわっと来たあとは、どちらかというとキシキシした肌触りになる。
浴槽の底が析出物で痛い。なんなら浴槽内の壁面も背中を付けるとトゲトゲして痛い。そもそも内湯も露天風呂も浴槽自体が析出物で覆われていて、元の材質や形がさっぱりわからなくなっている。露天風呂はケヤキの切り株で作られているそうだが、もう表面にはその片鱗も残されていない。
お湯に近い所は蛇のうろこ状、その上はつぶつぶ、さらにその上は釉を掛けて焼いたみたいになっている。そして露天風呂からすぐ下を見下ろすと、黄金色の川がダム湖に向けてドロリと流れつつ固まっているのがわかる。とんでもない温泉だ。
甘いにおい。味も甘い。弱いじゅわじゅわ感があり、ほんの少しの金属っぽさ。そして塩味。
ぬるいので、必然的に長湯になるが、入っていると高濃度炭酸泉に入った時のように、体がぼわっと温まる。熱いお湯に入った時とは違う、じわじわボワーッと中から温まる。
内湯の廃湯する口が、そのまま露天風呂の湯口になっている。露天風呂からはダム湖と橋が見えてなかなか景色もいい。切り株がお花のような形になっているのもユニーク。
湯上がりは肌も浴槽のようにコーティングされそうだと思った。肌は乾いた後はつるつるを通り越して、ギシギシしっとりといつまでもしている。本当にあまりにも凄い温泉なので、遠方でもこれはまたわざわざ来たくなるやつだ。