子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ 湯はぬるめのはずが実は適温、泉質は特に刺激なし
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★★★ 赤ちゃん向けの配慮は特にない
子連れ家族のための温泉ポイント
白骨とはまた印象的な温泉名だ。どんなおどろおどろしい温泉かと思わせる。元を正せば「白船」。湯船の内側が温泉成分で白くなるからそう呼ばれたと言う。
中里介山が大正2年から新聞連載をした「大菩薩峠」で「白骨の巻」に登場してから全国的に名が知られだした。
長野県安曇村のこのあたり、景勝地上高地にも近く、何度か近くにきたことがあったが、なかなか白骨温泉を訪ねる機会が無かった。
いつかきっと入ってみたい…ずっとそう思っていた温泉の一つだった。
上高地・乗鞍スーパー林道ではなく沢渡経由でくねくねと九十九折の山道を登ると、白骨温泉街の入り口に着く。
左手に見えるのが無料の公共駐車場で、白骨公共野天風呂に行く客はここに車を停めることになっている。
この駐車場には、江戸時代、白骨温泉の霊泉的効能を得た湯治客が建立したという三十三観音が並んでいる。
駐車場を出て坂を上ると、右手に白骨温泉観光案内所があり、その向かいが白骨温泉公共野天風呂入り口だ。
ところでガイドブックや白骨で手に入れたパンフレットには7・8月は9時半オープンと書かれていた(当時)が実際は今日は8時半にオープンしたらしい。
もしかしたら夏の土日など、混雑が予想される日は特別に早く開けているのかもしれない。
川の流れが二本合流して自然の隋道に流れ込む脇に公共野天風呂はある。
入浴するには湯川の渓谷に沿って階段を何段も下りなくてはならない。
階段も綺麗に整備されていて洒落た印象を受ける。周りの木々は広葉樹で、これは紅葉の頃は素晴らしいだろうなと思った。
肝心のお風呂は階段からも既に見えている。男湯が丸見えというのは本当のようだ。
脱衣所は広いとはいえない。
脱衣籠とロッカーはかなり沢山あるがスペースが狭いので、この籠が全部埋まるような日はさぞや着替えが辛いだろうと思わせる。
ドアを開けると少し青みがかった乳白色のお湯をたたえた楕円形の浴槽が待っていた。
シャワーのついた洗い場も四つばかり。あとは露天風呂だけのシンプルなつくりだ。
女湯は確かに上部をよしずで仕切ってあるが、それでも変化のある美しい川の流れと対岸の緑は計算されたかのように完璧で、これは景色だけでも比類ない露天風呂の一つだなと感激。夏の終わりの野の花が沢山緑の中に点在していて可憐だ。
子供たちをまずシャワーで流し、一人ずつ入れてやると、「熱い熱い」と言う。
ん?ここの源泉温度は37度くらいしかないはず。
でも確かに手を入れてみると少し熱く感じる。体感温度は41度くらいある(ちなみに外気温は21度)。
「入っていればすぐ熱くなくなるよ」と取り合わず、自分もシャワーの後、入ってみた。
おお、ちょっと熱い。うんでも、すぐ熱さは感じなくなる。刺激は全然ない。まろやかな感じ。最初に一瞬金属っぽい臭いがしたが、すぐゆで卵みたいな硫化水素臭になった。
それにしても想像していた通り、綺麗なお湯の色。
湯口から既に少し白濁していて、湯の中の手もまるで見えないほどよく濁っている。ロケーション、雰囲気とあわせて、確かに群馬の万座温泉、秋田の乳頭温泉郷鶴の湯温泉と甲乙つけがたい。
ああ良かった。ここに来て、このお湯に入ることができて。
温泉に心を癒す効果があるとしたら、この温泉は効果覿面だね。
浴槽は石でできていて、お湯の流れるところは白っぽくコーティングされてつるつるすべすべ。白骨の由来は白い船。これぞ白船だ。だが浴槽はともかく肌が白くなったかどうかは残念ながら神のみぞ知る。
翌日、同じ白骨温泉の泡の湯旅館を訪ねたが、露天風呂の雰囲気は公共野天風呂の方が上だと思う。
※ところでこの公共野天風呂の白濁した濁り湯は入浴剤を投入していたためだということが報道機関にすっぱ抜かれました。
そもそも濁り湯というのは、温泉の酸化した姿であり、どんなに濁る温泉でも鮮度が良ければ透明だと言われています。
白骨温泉公共野天風呂のお湯が、頻繁に入れ替えるために濁らないということであれば、まさにアピールする部分を間違えていることに他ならないのではないでしょうか。
まことにもったいない話です。そして、裏を返せばやはり、利用者を馬鹿にした話だと思います。(2004年7月12日 追記)